第2話
午後十時。
特にすることもなくネットサーフィンをしていると、中学時代の友達から電話がかかって来た。
矢野唯香。年に何度か会っているが、相性が合わない。それでも電話をかけてくる。
「もしもし」
スマホをスワイプして電話に出る。すると、高い声が聞こえた。
「あ、くるみ? 唯香だけど」
うん、知ってる。ディスプレイに名前が出ていた。
「どうしたの?」
「今どうしてるのかなって思って。連絡とるのは半年ぶりだね」
「うん、私はリフレッシュ休暇貰ったとこ」
「そうなんだ。私は子育てで大変」
唯香には子供が二人いる。
男の子二人だ。
三十の時に結婚して、三十一の時に子供を産んだから、今は上が七歳、下が四歳だ。
毎年年賀状に子供の写真を送って来る。二歳、三歳くらいまでならいいけど、六歳、七歳になっても送って来る。
二十歳になるまで送ってくる気だろうか。そういう、子供の写真を送られるのも、正直参っていた。
男より金とは思うけれど、本音のところ、自分は結婚したくてもできない身なのだ。
正直子供の写真を送ってこられても処分に困る。
「リフレッシュ休暇って、結構休めるんだっけ」
「うちの会社は勤続十年で貰うか十五年で貰うか選べて、私は十五年にした。三週間休み」
「そう、じゃあのんびりできるね」
「そうでもない。家事とかしなきゃいけないから」
「明日にでも遊びに行かない? 私も子育てからちょっと離れたくて」
あまり会いたくないんだけどなぁ、と思う。
それでも、くるみも家から少し離れたい。せっかくの休みだ。遊びに行こう。
「うん、遊ぼうか」
「じゃあ明日の午前十一時に待ち合わせて、ランチでもする?」
「いいよ」
待ち合わせの駅と場所を二人で考えて、川崎になった。
ランチの場所は考えておく、と言って電話は切れる。明日はなにを着ていこうか。
十月で、やっと最近になって涼しくなってきたところだ。着ていくものを決めると、通帳を眺めた。
もう少し増えないかなぁ、と思う。
最近になって、親元にいるのもきついと感じるようになっている。
数年でいいから一人暮らしができないだろうか。親に言ったら賛成するか反対するか。
気が重くて言えずにいる。でも、一人でのんびり暮らしたい。厄介な家事からも逃げ出したい。
そうだ、自立したいのだ。一人でのんびり暮らしてみたい。
でも父の障がいのこともあるし、許してもらえないかもしれない。
機会があるときに話をしてみよう。
午後十一時を回る。寝る支度をして、眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます