この場所にあった店なんだった?
クライングフリーマン
この場所にあった店なんだった?
================= 基本的にノンフィクション・・? ============
この場所にあった店なんだったっけ?
ここには、駄菓子屋があったんだよ。
この場所にあった店なんだったっけ?
ここには、古本屋があったんだよ。いや、貸し本屋だった。
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電気屋があったんだよ。電気工事もやったんだよ。テレビが来た時、嬉しかったな。
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自転車屋があったんだよ。大雪が降った時、オジサンがスキーで滑ったんだよ。
この場所にあった店なんだったっけ?
傘の修繕屋があったんだよ。傘の骨が折れても布が破けても、翌日には直ってた。
この場所にあった店なんだったっけ?
呉服屋があったんだよ。何かのお祝い事の時、座布団貸し出していたんだよ。
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写真館さ。何故かオジサンが凝り性でね。証明写真撮るのに半時間以上かかった。でも、いい写真だった。待つってこと覚えたな。
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新聞の取次店。腰の曲がったおばあさんが、一人で配ってた。『不思議屋』って屋号だった。なんで『不思議屋』?おばあさんが、不思議だったから。
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たばこ屋だよ。いない時は、客は代金を受付けに置いて行った。メモ書いてね。
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散髪屋だよ。ご主人が手を怪我して、廃業、他の仕事してた。
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クリーニング屋だよ。みんな、『洗濯屋』って言ってたけど。
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金物屋だよ。酒店なのに。釘1本から買えたよ。
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歯医者さんだよ。虫歯は簡単に引っこ抜いてくれたな。
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お茶屋さんだよ。芸者さんとは関係ないよ。『茶粥』食べてる家は買いに行ってたな。
この場所にあった店なんだったっけ?
八百屋だよ。うち。うちの家業。店を抜けて家に帰る。恥ずかしかった。
だから、お客さんが「お帰り」って言ってくれる。
店の端を通らないと、トイレにも風呂にも行けなかった。
もう、店はない。父が亡くなった時、借家借地の『貸主』さんに返した。
父が亡くなる数年前まで、店を営業していた。
周りから、五月蠅く言われて廃業した。
母は、「お菓子屋」に転業しようかと言っていたが、敵わなかった。
お客は、何でも「無いモノ」探してきて、アレはないの?と父に言ってくる。
父は、1人にでも言われたら、探してきて仕入れて来る。そんな人だった。
同業者で、ティッシュペーパー、落とし紙、生理用品まで売ってたのは、ウチだけだった。
だから、「お菓子屋」に転業しても、客は煩く言ってくる。
テレビが普及したお陰で、新製品が出ると、何回でも「アレないの?」と言ってくる。
注文販売にすればいいのに仕入れてくるから、売れ残りが出来る。
流通を知ったのは、スーパーに勤めた、後の時代。
予期した通り、一般小売店は資本のある業者に勝てなかった。
何で家業を継がなかったの?と失礼なこと言うヤカラは必ずこう言った。
「呼び込みすればいいのに。」
駅前ではなく、街中の小売店は近所の人がお客。無駄以外のなにものでもない。
近所にスーパー出来るから、と近隣の八百屋が「共同仕入れ」をして、スーパーみたいに売り出した。半年も続かなかった。危惧した通り、「裏切り者」が出て、「共同」が出来なくなった。
そして、そのスーパーより大きなスーパーが進出してきた。
食われた。元酪農だった、元映画館だった、そのエリアは元スーパーになった。
今は、住宅開発に失敗、駐車場にも失敗、『空き地』だ。
『栄枯盛衰は世の習い』。私の実家も今は『空き地』だ。
おしまい。
この場所にあった店なんだった? クライングフリーマン @dansan01
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