第11話、事務所の神棚 浸透滅却すれば…
ここだけの話である。とにかく、Yさんは臭かった。今までにない臭い臭いで、臭いはYさんのいる部屋中に広がっていた。サンキュー運輸の事務所も結構広かったが、事務所内に刺激臭が広がっていた。おかしい話をするが、臭いが痛いのである。同じ空間にいると、他人である私の体でさえ痛い。
当時は「そうは言っても、体臭だから大変だな」と思っていた。
本人も何度か周りにいわれたらしい。言ったらしい人を思い浮かべていたのか、「アイツ(が)、嫌い」といっていた。
内緒であるが、Yさんの臭いは、本人がいない時に事務所で「あの臭さは何?」と評判になっていた。
ある日、あまりのYさんの臭さにノックアウトしそうだった。そうはいっても、所詮は体臭である。
私は心の中で唱えた。
浸透滅却すれば、火もまた涼し。
事務所内に広がっていた臭いは、さらに強くなった。とても臭く、とても痛い。
……。我慢は無理でした。
いまだかつて、このような人の臭いに出会ったことはなかった。
見上げれば、今日もそこに神棚があった。
株式会社サンキュー運輸の怪 密(ひそか) @hisoka_m
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