第10話、事務所の神棚 神棚の説明

 株式会社サンキュー運輸の事務所内には神棚が祀られていた。

 私が配属された当初、神棚の説明があった。事務所の長老が私に聞いてきた。

 「ねぇ、神棚って知ってる?」

 当時は神棚が何なのかさっぱり分からなかったが、説明によると、あそこには神様がいて、港関係の事務所には必ず飾られているものらしい。何故飾るかというと、海の安全などを守ってくれているものだといっていた。

 私は神棚を見上げて、へぇ〜と感心していた。

 神棚には決まりがあって、毎日、神棚にはお水と榊をあげること。あと、その係は男性のみであるといわれたらしい。

 神棚はどう扱ったらいいのか、神棚を備えつけた時に専門の人を呼んで、当時いた複数の正社員がそういった説明を受けたという。

 「神棚にお水をあげるのは、どうして男性だけなんですか?」

 私は質問した。

 「さぁ…? 何か、嫉妬するとか? ……ねぇ、O君、そう言っていたよね?」

 事務員のOさんが口を挟んだ。

 「何でも、あそこ(神棚)には女性の神様がいて、女性が触ると嫉妬するとか、男性だけが(神様の)お世話をできるとか。アフロディーテ……? 何つったっけ、神様の名前? 何か言ってたけど…」

 それ、西洋の船の先端についてる航海の女神や…。

 よく分からないけど、神棚って日本の神様が祀られているものじゃないのかなと思った。


 後に、別の会社で神棚のあるところがあり、偶然、神社の後継ぎに神棚の話をしたことがあった。

 「神棚は女性が触っても別にいいのよ」

 「…ふ〜ん」

 「神棚って高い位置にあるでしょ?」

 「あ、はい」

 「きっと女性だと背が届かないから、係は男性のみとか言ったんじゃないかしら?」

 ……。そうなのかな? 気遣いしてくれてたってこと? そういうこと??

 結局、真相はよく分からないままだった。

 

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