第10話
面接は、想像以上に順調に進んだ。
私が選んだ就職先は、ゲームの開発企業。
理由はもちろん、この会社のゲームが好きだから。
けど、好きなだけじゃ就職なんてできない。
この1年で手に入れた全てを、この会社で生かせると、私は熱弁を奮った。
そんな私を見て、楽しそうに笑う面接官とは、最後のほうになるに連れて、賑やかに会話ができるようになっていた。
その想いが伝わったのか、最後に、面接官は優しく告げる。
「君はきっと、自分だけでなく、周りも変えれる人間だ。ぜひ、力を貸してほしい」
その言葉に、心が打ち震えた。
帰り際、私が買おうと思っていた、古いゲームのカセットが会社にいくつか残っているという話を聞いた。
そのゲームの売れ行きがあまり良くなかったこと。けれど、そのゲームを好きな社員も多く、もったいないからと、休憩時間などにプレイするように、いくつか保管していること。
それを聞いて、より一層ここで働きたいと胸を高鳴らせる私に、お土産のようにカセットを1本、渡してくれた。
「いつになるかはわからないけど、次にここへ来るときまでにクリアして、返してね」
面接官の、いたずらな笑顔に、思わず吹き出して、必ず返しに来ると、答えを返す。
ビルを出て、少し傾きかけの太陽の光に、目を細める。
そして。
彼女に、最後を伝えるために、私は走り出した。
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