第8話


 翌日から、本格的に、彼女が帰るための活動が始まった。

 昨日は準備があるからと、スーパーに向かった彼女を見送ってから、自分でも出来そうなことを探したけれど、いざ動くとなると、何から手をつければいいかわからない。

 無駄にアレコレ調べて、時間を無駄にして、彼女を出迎えた。

 そして今、彼女はスケッチブックの表紙に、デカデカとこう書いた。

      「坂上礼改造計画!!!!!」

 その中身は、ゼロから始められるダイエット方法や、就活に役立つ資格の取り方、面接の仕方、他にもたくさん、私の中から出てきたとは思えない実践的なトレーニングレシピが載っていた。

「まぁ、これが本当に正しいのか、私にもわからないんだけどね」

 不安そうに呟く彼女だったが、2人できちんと調べ、必要だからと図書館で本を借りて勉強し、早速自分を追い込むことにした。

 食事を変え、運動をして、積んでいた本を読む時間を増やした。

 それと並行して、彼女に料理を学び始めた。

 簡単なものは作れるけれど、基本はレトルトやインスタント、外食ばかりな食生活を変えて、今の食生活を続けるなら、彼女がいなくても出来るようにならなければならない。

 自分を追い込むと決めた日から、毎日が忙しかった。ともすれば、高校の頃より勉強する時間は長くなったかもしれない。

 普段あまり使わないところを酷使しているせいか、発熱や頭痛は頻発したけれど、それをぐっと堪えて、机にかじりつく。

 筋肉痛と頭痛、腹痛、他にも全身が痛むけれど、それを乗り越えなければ、自分は変われない。

 漫画やアニメの主人公だって、努力や苦労の果てに力を手に入れるのだ。一朝一夕の力なんて、何の役にもたたない。

 負けてたまるか。例え血を吐いても、骨が砕けても、やり遂げてやる。

 自分の体のどこから、そんな元気が出ているのだろうか。

 それとも、自分の力ではなく、たまにご褒美で彼女が膝枕をしてくれるたび、不思議な力をもらっているのか。

 とにかく、1年、私は自分を虐め抜いた。

 

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