自給自足の生活
さわみずのあん
朝食
料理の音が好き。
卵を割る音。かきまぜる音。
肉の焼ける音。油の跳ねる音。
トーストのジジジジ。
コーヒーメーカのこぽこぽ。
一通りの喧騒が終わると。
なんだか寂しくなる。
プレートには、黄色と茶色。
彩りが足りない。
料理の最後の仕上げ。
家庭菜園に向かう。
小さな園芸用の鋏を持って。
庭に。置いてある。
ソーラーパネル付きの、
ラジオの電源を入れる。
私が聞くのではない。
野菜たちに聞かせるため。
クラシックを聞かせると、
育ちが良くなるからだ。
けれどまだ、
朝のクラシックの時間には、
少し早かったみたい。
ニュースが流れる。
県内で、失踪した男女が、
一年で十三組にのぼり、
警察は、事件として捜査を、
なんて、アナウンスをしている。
全く物騒な世の中になったものだ。
私はそんな世俗から離れ、
自給自足の生活をおこなっている。
今日は特別な日だから、
いつもは二個だけれど、
今日は三個。
ミニトマトを収穫。
それから、リーフレタス。
新芽を間違えて、摘まないように。
今日は、六枚。
キッチンに戻り、トマトとレタスを、
土を落とすくらいに、さっと水洗い。
プレートに加える。
食べる分だけ、採ればいいのだ。
コーヒーをカップに注ぎ、
ミルクを加える。
プレートとカップを、食卓の上に置く。
ちょうど、庭のラジオから、
クラシックの音楽が聞こえる。
サン=サーンス『白鳥』。
静かに流れる時間と音楽の中、
私は朝食を摂る。
まずは、野菜から、
フォークで、ミニトマトを刺して、
噛み潰す。
ナイフで、食べやすいように、
こんがり焼かれた。
ぎゅっと手を、握っている。
柔らかそうな、赤ん坊の腕。
を切り分ける。
自給自足の生活 さわみずのあん @sawamizunoann
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