マツヤニ銀河は今日も平和…?

沙華やや子

マツヤニ銀河は今日も平和…?

 今日も可愛いレッタちゃんは星を食べています。レッタちゃんはルンルンせいに棲まう宇宙人の女の子です。


 レッタちゃんは身長40万キロメートル。体重は秘密だそうです。毎日モリモリお星様を食しているので相当な重さでしょう。


 レッタちゃんのお家はマツヤニ銀河に浮かんでいる大きな森の中。一人が好きだから、星を食べない時は、手製のハンモッグに揺られてみたり、ムーナバタフライという名前の蝶々と追いかけっこをし遊んでいます。

 虫たちは優しいレッタちゃんのことが大好き。ルンルン星の虫たちは地球の虫より体が大きいです。

 レッタちゃんは、ムーナテントウムシに好物のムーナアブラムシのいる場所を教えてあげたり、ムーナカブトムシのベビーシッターも引き受けます。自由気ままな一人暮らしなので、いっぱい時間があるのです。


 ある日のことです。

 レッタちゃんはこの目で見ました。モヤモヤ~っとした青い光の球が宇宙空間を高いところから落下していくのを。物凄いスピードです。ルンルン星から見下ろしていた、レッタちゃんと一緒に居たムーナひよこ。

 ひよこが言いました。「怖いわ! レッタちゃん。あれはなに?!」

「ンー、なんだろう。初めて見るものだわ! ひよこちゃん、あたしの後ろに隠れていなさい」「ええ、わかったわ!」


 ひよことレッタちゃんは暫く宇宙空間の様子を見守っていました。5分もせぬうちに、次から次へとその青い謎の球はビュンビュン降るように落ちて行きます。大きさはムーナひよこの体より一回り大きい。


 レッタちゃんは高いところに向かって指笛を鳴らしました。

 そこへ呼ばれてやって来たのはムーナキャット。雄の三毛猫です。

「お呼びですか?レッタさま」「ええ、さっきおまえの居る高いところから、青く光る球がたくさん降って来て落ちて行ったの。あれはいったいな~に?」

「……」「どうしてだまっている、キャット」


 レッタちゃんの下僕しもべであるキャットは暫くの無言の末、話し始めました。

「レッタさま、高いところには『グラス銀河』という場所が存在します。わたくしムーナキャットはレッタさまだけではなく、そのグラス銀河の創造主にも仕えております。男神ローレルさまです。」

「なんだかややこしいわね、お話が。つまり……男の神様が居るのね」「はい、そうでございます。淋しがり屋の……」

 レッタちゃんの隣で、ひよこも真剣な表情でキャットの話を聴いている。

「その神様と、さっきの光の球、なんの関係があるの?」とレッタちゃん。

 キャットは答えた。

「涙なのです」

「ン」

「ローレルさまは独りぼっちがお嫌いです、レッタさまとは正反対。先日、一緒に居らしたローレル様のばぁやが寿命でお亡くなりになりました」

「まあ!」悲しげな表情になるレッタちゃん。


 ひよこが一度くちばしを開け、また閉じた。「どうしたの? ひよこちゃん?」

「うん、レッタちゃん……そのローレルとかいう神、カッコよかったら結婚しちゃったら?」

「なななな、なにを突然?!」

「ああ! グッドアイディアです! ひよこ嬢。この話、持ち帰ってもよいですか? レッタさま」「ちょぃまーち!」「は……ぃ」

「会ったこともない神様のお嫁さんになるなんて、いやよ。ダサかったらどうすんの?!」

「レッタさま。ローレルさまはた~いへんお優しく……いいですか? いいですか? ゆっちゃっても、いんですか?」

「はやく言え」

「イケメンでーす! パンパカパーン♪」

 聴いていたひよこちゃんがノリノリになってきた。「お見合いしちゃいなよ。レッタちゃん!」

「う……」「嫌だったら断ればいいじゃん」「う、ん」

 嬉しそうなムーナキャットがスマホを取り出した。

 パシャリ!

「あ! なにをする! あるじの断りもなしに、キャット! こら」

「お美しゅうございます、レッタさま。このお写真を! ローレルさまにお見せしますです、はい~」


 ルンルン気分で高いところへキャットは去って行った。


 そして翌日。

 ゆ~らゆら。ハンモッグ、いーい気持ち、フンフンフ~ン♡くつろいでいるレッタちゃんのところに、ゆっくりと雲が降りて来る。

(え)

 だれか乗っている。


 スタッ。マツヤニ銀河の森に着き、雲を降りたナイスガイ!

 キャー! なにこのハンサム。か~っこ良いっ(はぁと)


 紋付羽織袴を着た、クールな男性が!


「ハッァ~イ。レッタ姫」

「あ、あたしの名前をなんで知っているのですか? あなたはだぁれ?」ドキドキ……ドキドキ……。

「わたしはムーナキャットにレッタ姫を紹介された男神ローレルです。もう、泣きたくはありません……」

 そう言って涙を浮かべ、顔をそむけたローレル。


「あ、あなたが……。キャットからお話は伺っています」

 にしても、気になるのはいでたち。

(気が早くね)とちょぴり思うレッタちゃんは顔色が曇った。

「な、なにか……レッタ姫のご機嫌を損ねてしまうような事をしてしまいましたかな? それならば謝ります」


 丁寧で、優しい神様だわ♡(せっかちだけど)


「いえ。あまりにもローレルさまが素敵でいらっしゃるから緊張していますの」

「おや! 愛らしい方だ。……ムリじいはいたしませぬ。もしもよろしければこれを……」


 あ! わたぼうしだー! 憧れの! 白無垢。


 レッタちゃんは、まず神様のイカした顔にメロメロになり、そして白無垢着たさに、なんとなく結婚を決めた。


 2年後。

 オギャー! オギャー!

「うーむ。レレルっち、いないないベロベロ!ぶゎああああ!」

「ぅええええええええんッ! エーンエーン!」赤ちゃんのレレルがギャン泣き。

 ローレルがあやそうとしたのだ。


「ン、もう! パーパァ、そんな大声でヘンガオしたらびっくりするに決まってるでしょう、目ん玉ひん剥いて。こわい、こわい~」と赤ちゃんを優しく抱き上げ、レッタちゃん。


 あれから二人は結婚し、グラルン銀河という新しい銀河を創りました。そうしてベイビーを授かったのです。

 とってもLOVEな三人。

 あ、男神ローレルの食べ物は独身時代は虫でした。でも、レッタちゃんの友だちだということを知ると、レッタちゃんと同じように星を食べるように変わったんです。

 ベイビーのレレルは星屑の離乳食をもうすぐ食べられそうです。


 どこでどんな出逢いがあるかわからないですね! 宇宙って。



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マツヤニ銀河は今日も平和…? 沙華やや子 @shaka_yayako

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