第18話 戦いの後で




「…ヴィ!…リヴィ!おい返事しろ!」


朦朧とする意識の中、相棒の声が耳に飛び込んできた。身体中が痛いが、その声だけは何故かクリアに、明瞭に聞き取ることが出来た。


どうにか痛む体を動かして、シートベルトを外す。


「うっ…はは…こりゃやらかしたな」


「リヴィ…はぁ……」


同時にコックピットハッチが開き、ヘルメットを脱いだ相棒の姿が視界に入る。怪我は…してねぇみたいだな。良かった。


「どうした相棒、そんな息切らせて」


「どうしたじゃねぇよ。ったく、心配させやがって…」


ため息を吐く相棒。確かに傍目から見たらコックピットを貫かれたように見えたかもしれない。


けど実際は、奴の刃はコックピットの真下を貫き動力炉を破壊したに留まった。爆発しなかったのは運が良かっただけだが、生きてる事には変わりはない。


「それより、ホワイトフランメはどうなった?相棒が生きてるって事は勝ったか?」


「……いや、俺は敗けた。単に見逃されただけだ」


「…そうか」


沈黙が降りる。俺も相棒も次の言葉を紡ぐことが出来ず、押し黙ってしまう。それは初めて敗北を経験した故か、はたまた体の痛みからか…


兎も角気まずい空気が流れていると、そこへ遠くからスラスターの轟音が聞こえて来た。


「救助か?」


「…あぁ、傭兵軍の部隊が来てくれたらしい。俺達の事情も知ってるから特に素性を隠す必要もないってよ」


「へぇ、そりゃ助かる」


言いながら相棒の助けを借りてコックピットから這い出る。ハッチの縁に立って周囲を見回すと、陽は大分と傾き、大地は光に照らされて紅く染まっていた。


そして少し離れた所には黒煙を上げる漆黒の機体が横たわっており、相棒が敗北したという事実を突き付けてくる。


決して相棒が無敵だとは思っていない。無論俺も。


ただやっぱり、メンタル面に影響がないかと言われると…


「気にすんな、中身はちゃんと生きてるんだから」


「……そうだな」


っと、気遣われちまった。俺もまだまだだな。



********



『ホワイトフランメより管制塔、着陸許可を』


『着陸を許可します。4番ステーションへどうぞ』


『了解した』



目の前で巨大なハッチが開き、私は機体の高度を徐々に下げていく。


眼下では整備員やメンテナンスユニットなどが慌ただしく動き回っており、私はその只中へ降下。


…僅かな衝撃と共に着陸して足元の固定アームが接続される。そのまま自分の駐機スポットまで移動させられた後、私はヘルメットを脱いで機体のシステムを切った。


と同時に、足元に立ったからリーゼが通信を繋げてくる。


『教官、出撃ご苦労様でした。求めていたものは見つかりましたか?』


「あぁ、正直予想外ではあったが…あれは今後に期待出来る」


『なるほど、教官をしてそう言われるパイロットですか。一度相見えてみたいですね』


「確かに良い経験にはなるだろうな。ただ…いや、この先は余計か」


整備員に渡された栄養ゼリーを流し込み、私はコックピットから出て地面へ降りる。そしてパイロットスーツを格納すると、リーゼが頬を膨らませ腕を組んでいた。


こういう所は年相応だ。


「そこで止められると気になるのが人間なのですが?」


「すまないな、余り口外できるものじゃない。いつかお前が彼らと戦った時にでも伝えよう」


「では一応納得しておきます」


言って私に並び歩くリーゼ。パイロットスーツを着ている所を見るに、私が不在の間も訓練していたのだろう。この老兵には眩しい向上心だ。


「そう言えば、エーデルシュタイン?さんから教官へ通信がありましたよ。何でもレヴナントについて話したい事があるとか」


「何…?」


橙灯の宝石エーデルシュタイン…私やレヴナントと同時期に戦場に居た「最凶」という言葉が相応しい男。


ここ数年レヴナントと同じく音沙汰がなかったため死んだものと思っていたが…まさかレヴナントに触発されて動き出したか。


(…奴とあの傭兵を会わせる訳にはいかんな。将来的に超えはするだろうが、今の彼に、エーデルシュタインは荷が重い)


それに彼には敗北を経験させたばかりだ。これからという時期に再び私に匹敵する強者とぶつかるのは、ハッキリ言って論外。


折角見逃したのにすぐに殺されてしまっては、意味がない。


「全く、私が選んだ事とは言え、何故奴の後継のために頭を悩ませなければならないんだ」


「???」



リーゼが頭上に疑問符を浮かべたような顔をしているが、気にする事なく私は基地の司令棟へと歩みを進めていくのだった。



********



さて、味方に救助された俺達はグロメア前哨基地に戻ってきていた。ヘリの機内ではテイラーから連絡があり、輸送任務は無事成功したとの事でそのまま帰って来たのだ。


なお俺達が撃墜された事は伝えておらず、依頼を達成した上で機に損傷を受けたため撤収した…と言う事にしてある。


報酬は既に振り込まれており、今の俺は大破した愛機の状態を整備員に見てもらってるんだが…




「こりゃまた派手にやられたな、もうこの機体は使えないぞ」


「やっぱそうだよな…ガルム系統の機体で市場に出てるのってある?」


「いんや、儂の覚えてる限りじゃ無いな。と言うか新鋭機自体がマーケットに流れてねぇ」


と言った具合に、中々難航している。…ん?死にかけたってのに切り替えが早すぎる?いや別に、死にかけた経験はこれが初めてじゃ無いし、結局誰も死んで無いからそこまで気にして無いぞ?


まぁ……あの白い野郎は絶対潰すけどな。



話が逸れた。ともかく、俺は早いとこ新しい機体を見つけないと演じる云々の前に依頼が受けられん。でも最近THの需要が伸びていて旧式しか市場に流れてない…さぁどうしよう。


(誰かお下がりの機体でも良いから貸してくんねぇかな……って)


「そうじゃん」


「あ?急にどうした」


「いや、機体のアテが出来た」


「は?」


言って俺は格納庫から出て自室へ戻り、メモしておいたアドレスにメールを送る。宛先は…傭兵軍司令部だ。





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愛機を黒く塗っただけなのに!〜最強エースの帰還扱いされた傭兵は、名前負けしないよう全力で戦って本物のエースを目指します〜 ユーラ@KKG&猫部 @yula0628

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