第9節 〜〜〜戦闘〜〜〜
はぁはぁ、サクナは本当に死ぬのが怖くないのだろうか。疲れ切ってもう走れなくなりそうな時。
「お願いなんです!」
サクナと何やら複数人の男性が揉めているようだった。
「いくら、神の能力がまともに使えるからといって一般人に交戦許可を降ろすことはできません。そもそもここは規制エリアです早く避難してください!」
どうやら、サクナはあの女子高校生の話を聞いて本当に猫を助けに行くつもりだったらしい。
正直言って感心した。俺は学校の行事などでは率先して協力するタイプではなく、どちらかというと石井と俺達だけの隠れ場で毎回サボっていた。
俺は元から人と関わるのもおっくうだったのだ。
「でも、中には家族を失った女の人の猫が取り残されているんですよ!」
「とにかく、何があってもあなたを入れることはできません!もし幻獣と戦いたいのであればハンターズに入会してからしか許可を下ろすことができません!」
「もし、規則を破れば、懲役3年が下るかもしれませんよ!」
ほう。どうやらハンターズの関係者らしい。多分ハンターズ管理委員会かハンター直属の管理者って所だろう。
とにかく、サクナを止めないと。そう思い、近づこうとした時。
「青木さん達!緊急です。幻獣が突然変異した模様。推定災害度レベルA級です!」
「なっ!?」
ん?どうやら何かあったらしい。
「それに、現場のハンターB級1名、C級4名がそれぞれ重傷。すぐに退避させないと危険な状態です!」
聞くにかなりまずい状況らしい。
まさかと思い、サクナがいた方を見るとそこにいたはずのサクナが姿を消していた。
まずい。聞いてみるにそのA級の幻獣はかなり強いに違いない。どうする、俺の力を使うにしても懲役3年も下されてしまえば、サクナの生活はどうする。
「おい!あの子がいないぞ!」
そう言い、ハンターズ関係者の人達も奥に消えてしまった。
どうしようと思っていたその時、
「お〜い!嵯峨〜!」
石井の声だ。なんでやつまで来るんだ。
「聞いたぞ、お前達が規制エリアに入っていくのを。」
「妹さんは?」
俺は奥の方を指差し、今あった事をありのままに伝えた。
「そうか…それはまずいな…」
「助けに行くべきか、それとも懲役3年を回避すべきか…」
そう迷って呟く。
「嵯峨、ここは戦略的撤退というやつだ。聞いた話によるとハンターの管理者は最低でもA級だそうだし。」
「でもっ!」
まだ納得が行かなかった。もっと早くに助けに行っておくべきだったかもしれない。そう考えると血の気が引いてきた。もう家族を失いたくない。
「なぁ嵯峨。お前の妹の神は推定するにおそらく、ヘラだ。順当に行けばA級にはなれる存在だ。」
いや、そこは関係ない。神は1人につき、複数人にタレントを与えている。ブレーカーが落ちるのと同様に流石の神でも一人一人平等に力を与えるのは無理なのである。どうくらい強くなるかはその人の適合力。つまり才能ということ。もしサクナがヘラの能力を持っていたとしても適応力がなかったら意味がない。
そう思っていると、石井が俺の手を掴んで走り始める。
「おい!離せよ!」
「違うんだ、人が来た!」
俺は理由もわからず、ただ石井に連れられていくだけだった。
サクナを待っている間、俺は居てもたってもいられなくなった。もしものことがサクナにあったらとかあの時違う方向に行けばこんな事にはならなかったのではないかとか。
大体20分くらいだろうか。
何やら前の方の群衆がざわつき始めた。
「嵯峨!、妹さんだよ!」
下を向いて俯いていた俺はすぐに顔を上げた。
そこにはにこやかな顔をして猫を抱きしめているサクナの姿と先ほどサクナと揉めていた人たち、ハンターの人がいた。
「はい!猫さん助けてきたよ!」
そう言い、サクナは誰かに猫を渡す。姿が見えると、さっきの女子高校生だと分かった。
その後、すぐに俺はサクナの元へと駆け寄った。
「おい、何勝手なことやってんだ!」
「ごめんなさい、お兄ちゃん…けど、私ちゃんと活躍できたんだよ…」
そう言いながら少し泣きそうになるサクナ。
その時、ハンターズの関係者の人達が聞いてくる
「サクナさんのお兄さんですか?」
「は、はい…」
「あなたの妹さんは今回のホードにおいて多大な活躍を見せてくれました。単刀直入に言いますと、ハンターズへの入会をしてほしいのです。」
「何言ってるんですか!?そんなの無理に決まっているだろ!」
そう言い、サクナの手を引いてその場から離れようとする。
「お兄ちゃん、話を聞いてあげて!」
そのサクナの言葉に一度足を止める。
「お兄様、妹様は少なくともA級にはなれる存在です。今現在、ハンターズにはたくさんの応募が来ていますが、A級以上のハンターはお世辞にも十分に多いとは言えません。今ならより手厚い対応を予定しています。」
「サクナはハンターになりたいのか?」
一応、もう一度聞いてみることにした。
「うん。さっきの戦いで確信した。私はハンターの仕事では死なない。きっとたくさんの人を助けられる。」
サクナの目は本気だった。
「分かりました。少し考えさせてください。」
とりあえずここで揉めても仕方がない。早く家に戻ろう。
「ありがとうございます!是非ハンターズへの入会を検討していただきたいです!」
その言葉を後に俺達は帰宅した。
「お兄ちゃん。本当にハンターに志願していいの?」
「俺の気が変わらない内に試験を受けに行ったほうがいいぞ」
結局あの後、サクナの熱弁により俺の心はおれた。というよりも、サクナの人を助けようとする性格的にもハンターズに入会させておいた方が安心だろうという苦渋の決断だ。
「ありがとう!お兄ちゃん!私、お兄ちゃんにいい生活送らせてあげるから!」
そう言い外に出かける準備を始めた。
「もう行くのか?」
「お兄ちゃんが気が変わらない内にって言ったんじゃん。」
「よし、俺もついていってやるよ」
少し、気分が明るくなった。今まで悩んでいた事がやっと解消されたからだろう。
ドアを開けると、外は晴天だった。
「お兄ちゃん、行こう!」
そう言い、俺達は歩き始める。
もしかして国家級になれたりしてとか他愛もない会話を交わしながら俺達はハンターズ本部へと向かった。
幻獣闘争 猫合気道 @neko_aikido
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