第8節 〜〜〜ホード再発〜〜〜

国家級ハンター。それは国が正式に定めたもので、ハンターの中でも特に最強のハンター。また、幻獣関連の制度の変更には絶大な効力を持つ。

そんな国家級ハンターに選ばれたのが…

「安住カワセさんと三宅ヨネカさんです!お二人の使用している神はアポロンとアルテミスです!お二人の話ではこの2つの神が使う弓は幻獣に対して絶大な効果を誇るとのこと!また、これに乗じ、たくさんのハンターズ志願者が現れました!」

「アポロンとアルテミス!?この2人もまたえげつない神がついてしまったものだなぁ」

と、石井が俺の方をチラチラ見ながら言ってきた。

別に俺もこんな力欲しかった訳ではなかったのだが。

「ねぇていうか、お兄ちゃんも国家級ハンターになれるんじゃないの?」

サクナの唐突な質問に俺と石井は思わず飛び上がる

「いやいや、サクナ。俺にはそんな仕事は務まらないし、もし俺がその仕事で殉職でもしてみたらお前はどうするんだ」

「そうだよ、嵯峨さん。いくらゼウスの力を持っていて不死身って言うわけではないんだ。」

「まぁ、確かにそうだけど…」

サクナは少し不憫そうだ。俺に死んでほしいのか?いや、俺はまだ死にたくなんかないぞ。

「私、ハンターズに入りたいの」

「え?」

俺と石井はさっきよりも飛び上がる。周りにいる何人かが俺たちの方を見た。

「おい、サクナ。自分が何を言っているのか分かっているのか?」

「けど、私こんなすごい力を持っていて人のために何かしてやれないなんて悔しいもん」

まぁ、確かにあいつらに復讐してやれないのは悔しい。いつか必ずお母さんの仇をうってやる。

「それに、ハンターズでA級になれば、年収も800万は超えるからこれからお金に困ることもなくなるんだよ?」

ハンターズには国家級、A級、B級、C級、D級に分かれている。だいたいの人はBかC級になるのだそう。

「いや、嵯峨さん。もう一度考え直してみてよ。そんなにお金を稼いでも死んじゃったら意味無いんだよ?」

「じゃあ、お母さんの仇はどうやって打つの!」

どうやらサクナはお金を稼ぐという名目上、お母さんの仇を打ちたいがためにハンターズに志願したいらしい。

その後、俺達は気まずい雰囲気のまま復旧された俺達の家へと向かった。どうやら、石井の家も復旧されているようで石井は自分の家へ帰った。

「なぁ、サクナ。いくらお前がまぁまぁな能力を使えたとしても、やっぱり俺は不安だ」

「だから、本当に大丈夫なんだって!」

そう言い放ち、自分の部屋に行ってしまった。

はぁ…どうしたものか。サクナはお母さんが死んでしまってからずっと気が立っているようだ。

まぁ見てやらんこともないかと思い、ハンターズのXアカウントを開いてみた。

すると、そこには安住さんと三宅さんが2人で並んで一般客と写真を撮っている姿がアップもされていた。もはや、アイドルか。

そう思いつつ募集ページを開いてみると、色々な情報が載っていた。

現在確認されている幻獣やその対処法、またサクナも言っていた給料についてもだ。

確かに、こんなに給料を貰えれば生活に困ることも無いだろうと思うが、それでも自分の命は失いたくない。

そう思い、パソコンを閉じた。自分の部屋に戻って仮眠でもしようか。明日から学校が再開するのである。皆、それぞれの能力を自慢するのだろうか。何があっても俺の能力だけはあまり見せたくないな。俺はあまり、目立ちたくないタイプだ。

だから最初から目立っていなさそうな石井を友達として選んだ。

2階に上がり、部屋に入ろうとしたその時。

ヴォォォォォォォォァォ

あの時と同じような警報がなっている。

自分のスマホに緊急警報が届いた。外は何やら騒々しい。だいたい何が起こったかは予想がつく。ホードだ。あの時と同じ幻獣達がまた現れたんだ。

「サクナ、避難するぞ!」

そう言い、サクナの部屋を開ける。

「うん。」

あんなにハンターズに志願していたサクナもいざとなれば怖いのであろう。すぐに返事をして部屋から出てきた。

スマホを再度確認してみると、石井からも連絡が来ていた。

ーーホードが、起こった。そっちは大丈夫?ーー

とりあえず、大丈夫とだけ送って外に出た。

そこにはたくさんの人がおり、あの時の恐怖を思い出した物もいた。案外、俺とサクナは平気だった。

「みなさ~ん、落ち着いて避難してくださ〜い」

多分、ハンターらしき人が皆を誘導している。

どうやらホードの起こった現場はここからは少し遠いらしい。

とりあえず、俺たちは規制エリアから出ることにした。

規制エリアとは、ホードが起こった際に二次災害に備え周囲1kmをハンター、もしくは政府関連、ハンターズ管理委員会の人たちしか入れないように規制されるエリアである。

後少しで、規制エリアから出られるというその時、泣いている女の人がいた。見た目的に女子高校生くらいだろうか。というか、なぜか見覚えがある。自分の記憶を辿ってみる。

ハッ、やはりそうだ。前のホードが起こった時に、神戸の避難所にいたあの泣いていた女子高校生。一体なぜ泣いていたのかは分からないが、まぁ家族の誰かが亡くなったのだろう。俺たちと同じだ。

無視をしようとし、通り過ぎようとした時、急にサクナがその女子高校生に話しかける。

「どうしたんですか?なんで泣いているんですか?」

おいおい、それはあまり聞いてはいけないのではと思い、足のペースを速めた。

「私の猫が…唯一の家族が…」

猫?唯一の家族?その2つの単語が脳の中で噛み合った。つまり、こういうことか。前の避難所で泣いていた時、たぶんその時は両親が亡くなったのだろう。そして今回のホードで一緒に暮らしていた猫が置き去りになってしまっというわけか。

「探しても見つからなかったんです…いつも影の方で寝ているので…」

その言葉を聞いた瞬間、サクナが進行方向と違った方に駆け出す。

「おいっ!」

呼び止めようとするが、サクナの足が早すぎて意味がなかった。サクナは陸上部に中学入った時から所属している。県の大会でもTop3に入るほどの実力者だ。

俺は追いかけるが、あまりのサクナの足の速さには俺も追いつきようがない。

サクナはその現場に行ってどうするつもりなのか、どうせ現場の人に取り押さえられて、何も出来ないというのに…

そう思いながら必死に走った。


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