繭の調律

金時まめ

〜繭の調律〜


繭玉になって うずくまる日々

ただ白い世界で

何も感じていたくなかった




あるとき

静まり返った胸の奥で 一音が鳴り響いた


  440Hz

  それは 調律の基準音


鍵を打つ その指先の強弱で

弦の響きに呼応する 楽器の音


スタッカートでもない短さで

でも強く 心に残響する A(アー)の音


ひとりきりの繭の中

自分だけの音を聴いた


繭玉にお礼を言った



わたしという音叉は

同じ共振の中で

同じ揺れを感じ

同じ空を見上げ 

違う色を見て

違う思考を交換し

違う景色を伝え合う


それがわたしの 調べになっていく



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