第十話:マッチポンプ株式会社、設立
アルプスの麓にある豪華なアジト。しかし、アンナの野望はもはや、この静かな場所には収まらなかった。
「おばあちゃん、ロンドニアへ行くわ。もっと大きな炎で、この世の腐った仕組みごと燃え上がらせたい」
舞台は世界の金融の中心地へ。アンナは表向き、防災コンサルタント会社「アンナ・セキュリティ」を設立。おばあちゃんは天才ハッカー「グランマ・ファイアウォール」として、裏から会社を支える。最初のターゲットは、悪どい地上げと株価操作で儲ける不動産王、モーガンだ。
しかし、モーガンも裏社会との繋がりが深い危険な男だった。彼はアンナの会社の背後にある巨大な資金源に気づき、凄腕の用心棒を雇って彼女の過去を探らせる。ついに、アルプスのアジトの場所まで特定され、アンナは絶体絶命のピンチに陥った。
だが、アンナは動じなかった。彼女は自ら用心棒の前に姿を現し、一枚の書類を見せる。それは、モーガンがこれまでに行ってきた全ての不正取引の証拠。おばあちゃんが彼のサーバーから抜き取ったものだ。
「あなたの雇い主は明日、破産します。そして、あなたも共犯者として追われる身となる。でも、私につけば、新しい人生と今の倍の報酬を保証しますわ」
それは、脅しであり、取引であり、スカウトだった。
翌日、アンナ・セキュリティはモーガンの不正を告発。彼の帝国は崩壊し、アンナは「金融街の守護神」として新たな名声を手に入れた。
高層オフィスの窓から煌めく夜景を見下ろし、アンナは静かに呟く。
「見てて、おばあちゃん。マッチ一本で始まった火遊びが、世界経済すら燃やし尽くす大火になるのを」
聖女の顔をした天才詐欺師は、今、世界という新たな火種に、その美しい指を伸ばそうとしていた。
(第一部 完)
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黒い炎のアンナ ~マッチポンプ売りの少女~ クソプライベート @1232INMN
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