極限の緊張感と、それとはあまりにミスマッチな「放屁」という下俗なテーマ
- ★★★ Excellent!!!
将棋界の最高峰「A級」への昇格を懸けた極限の緊張感と、それとはあまりにミスマッチな「放屁」という下俗なテーマが、絶妙なバランスで融合した「異色の将棋エンターテインメント」です。
非常に独創的で、最後まで一気に読ませる力がありました。
単に「オナラが臭い」というだけでなく、脇息(きょうそく)を「便座(ベンザブロック)」に見立てて射角を調整する、音無しのための静止時間を分析するなど、戦略的な記述が非常に緻密です。この「無駄に高い技術力」と「真剣な分析」の対比が、シュールな笑いを生んでいます。
「詰めろ逃れの詰めろ」という高度な戦術が、失神寸前の極限状態で語られる落差。
「ひふみんアイ」の再解釈、本来は盤面を客観視するための動作を、至近距離からの「直噴攻撃」に転用する発想には脱帽しました。
「窒息詰め」という結末、物理的(異臭)にも将棋的(身動きが取れない)にも掛かっており、非常に綺麗な(?)オチでした。
「さわやかサワデー」と呼ばれた凛としたヒロインが、最終的に「4日間溜め込んだ便秘」という自らの不調を、最強のカウンター兵器へと昇華させる展開は、少年漫画のような熱さすら感じさせます。雲竜型の構えから放たれる「意趣返しの異臭返し」は、まさに伝説のワンシーンと呼ぶにふさわしい迫力でした。
将棋の「静」のイメージを覆す、アクティブでバイオレンスな心理戦でした。記録係の受難(秒読みの声が変わる、最後は逃げ出す)が、現場の地獄絵図をいっそう引き立てています。