第8話空飛ぶ迷子王・ツバスケの反省文 大公開

『空飛ぶ迷子王・ツバスケの反省文 大公開』

 タイトル:「ワシ、やらかしました ~渡り鳥、道を誤るの巻~」

(書いたのは、巣材の藁とツタで綴じた“羽ノート”。隣でツバコさんがガン見してます)


【反省文・本文】

 おれは、ツバスケ。

 ツバメ界では中堅やけど、いまだに渡り道に自信がない男です。


 ことしの春、福岡を目指して出発したはずが――


 ・甲子園に3試合も立ち寄る。

 ・応援歌熱唱中にルートを外れる。

 ・その間、家族は餌とってた。ワシはラジオ聴いてた。

 ・スマホの電池切れて、道に迷う。

 ・GPSあるのに、地図の向きが分からん。

 ・逆方向に飛んで、まさかの東京湾横断。

 ・最終的に、つばこさんからブチギレ。


 家族に言われた。

「お前は渡り鳥やなくて、“さすらい鳥”や」


 ヒナたちからも言われた。

「パパのせいで給食(餌)遅れたにゃ」


 そしてなにより――


 ツバコの涙。

「もう帰ってこんかと思ったわ」って。


 それ聞いて、ワシ思った。

「ワイ、ほんまにアホやったんや……」って。


 なので、ワシは誓う。


 1.ラジオは餌5匹以上とったらにする。

 2.スマホは充電100%確認してから飛ぶ。

 3.甲子園は1カード1試合まで。

 4.地図アプリの「北が上」設定を理解する。

 5.そして――ツバコとヒナたちの笑顔を絶対守る。


 ツバメにとっての家は空の中やけど、

 ワシにとっての家は、ツバコの横顔や。


 ――ツバスケ(涙でびしゃびしゃになりながら)


【監修:ツバコ】

「……まぁ、100点中……45点。漢字少ないし。けど、気持ちは読んだ。あとで羽繕いしてあげる。」


 つばまる:「次は“空中作文コンクール”出られるんちゃう?」


 つばみん:「パパ、初めて反省してる顔がちょっとだけカッコよかった…かも?」


 美香(翻訳機で読んで):「もう、ちょっと泣けた…!」


 美鈴:「なんか、優馬に似とるとこあるばいね」


 優馬:「……ぐぅ。なんも言えん…」


 双子ちゃん:「つばすけ、がんばれ〜〜!!」





『それ、渡り鳥ちゃう。阪神ファン鳥や。』

 9月末、関西上空――

 ツバスケ(甲子園の真上でホバリング中)

「よっしゃーッ!!この試合で優勝決まるかもやーーん!

 高橋が先発で、9回には岩崎…完璧やないかい!!」


 ツバコ(足バタバタしながら)

「ツバスケぇぇぇ!!もう今すぐ南向かわなアカン季節やでぇ!!」


 ツバスケ「せやけどこの瞬間を見んでどーする!?

 ワシの渡りは“愛とタイガースと共に”やで!!」


 そして時は流れ……

 10月→クライマックスシリーズ

 11月→日本シリーズ突入(しかもフルゲーム)


 ツバスケ「優勝やーーーーーッ!!!(涙)

 ほんま、見届けてよかったぁぁぁ!!!」


 つばみん(娘)「……今、11月13日やけど?」


 つばたろう(息子)「おとん、飛ぶ前に凍る季節やん……」


 ツバコ(バチバチに怒りながら)

「あんたの羽、霜焼けできとるがな!!

 なんで11月にツバメが関西におるねん!!」


 11月半ば、小倉家の軒先

 光子「え?まだおると?」


 優子「しかも、タイガースの旗かついでると!」


 美香「いやもう、ここだけ阪神ファンの聖地になっとるやん……」


 美鈴「渡りはどこ行ったと……?」


 優馬「もう“阪神に渡った鳥”っちゃね……」


 いよいよ出発……でも時すでに遅し!!

 ツバスケ「ふぅ〜、ほんまええシーズンやったなぁ……

 ほな、そろそろ南に向かうか――」


 ツバコ・つばこ・つばたろう・つばみん「

 おっっっっっっっっっっっっっっっっっそ!!!!!!」


 ツバコ「どこが“そろそろ”やねん!!

 もう渡り鳥界では完全に出遅れ部門No.1やで!!」


 ツバスケ「え……でも…六甲おろし…優勝記念Tシャツ…」


 つばこ「そのTシャツ、サイズ“カラス”やろがい!!」


 つばみん「もうこっちは羽根ヒーターつけな飛ばれへん気温やで……」


 空を飛べば、吹きすさぶ木枯らし

 ツバスケ「……さ、寒い……でも……

(ポケットから小さな“虎のマスコット”を出して)

 この熱き魂が、ワシを南へ運ぶ……(ガクガク)」


 ツバコ「いや運ばんわ!その前に羽根凍るわ!!

 渡り鳥なめんなあああああああッ!!!」






『ついに渡りを放棄!?ジャカルタへ、羽ばたかずに到着!』

【福岡空港・搭乗ゲート裏】

 ツバスケ(ヒゲつけた変装で)

「しれっとカバンの中に…っと。人間ら、全然気づかんわ~。

 ふふふ、“低燃費渡り”の始まりやでぇ……!」


 つばみん(スマホで航空アプリ見ながら)

「おとん、バリバリ“搭乗便”やん……!

 飛行機使うツバメって……おる??」


 ツバコ(ため息)

「うち、もう知らんわ……」


【そして7時間後、南国・ジャカルタにて】

 ツバスケ「うおぉぉ〜〜!!常夏〜〜〜!!!

 この空気や、羽がとろけそうやぁぁぁ!!」


 ツバコ(バシッ)「飛んでへんくせに何言うとんねん!」


 つばたろう「マジで。うちらガチ渡り組からしたら

 “インチキ系ツバメYouTuber”みたいやで」


 つばみん「炎上せんのが不思議やわ……」


 ツバスケ、現地で記者会見

 記者ツバメ「今回、飛行機使用での渡りについて、どうお考えですか?」


 ツバスケ「えー、これもですね、

 現代の“渡り方の多様性”っちゅうやつでして……」


 ツバミ(乱入)「ほんならアンタ来年、貨物便で帰ってもらうからな。」


 ツバスケ「え、冷蔵便とかやめてや?」


【小倉家の軒先】

 双子「ジャカルタってどこ〜?」


 美香「インドネシアの首都よ。

 普通のツバメはね、ちゃんと自力で飛んで行くのよ」


 優馬「そもそも航空券って誰が……」


 美鈴「それが、なんかANAのロゴ入った巣材があったらしいっちゃ……」


 双子「え!?マイレージ貯めとった!?」


 ジャカルタにて

 ツバスケ(椰子の木に寝そべりながら)

「ふぅ~、南国のビールはうまいのぅ~……」


 ツバコ(ジト目MAX)「あんた来年、“ANA=あんた何様アホか便”やからね」




『南国でズル渡りの代償、メタボ爆誕!』

 常夏のジャカルタ、ヤシの木の下

 ツバスケ「ぷっはぁ〜!

 やっぱ常夏ビールは最高やな〜〜!うまいっ!」


 つばみん(娘)「パパ……その腹、もはや“燕”じゃなくて“鷲”くらいあるよ?」


 つばたろう(息子)「いや、むしろ“トトロ”寄りやろ」


 ツバコ(羽をパシン)「その腹でどうやって飛ぶつもりよ!?

 あんた、渡り鳥やなくて“渡らん鳥”になっとるやないかい!」


 メジャーで測られる、ツバスケの腹囲

 ツバミ(計測係)「うわぁ〜、これは……渡り鳥国際規格オーバーやね。

 羽ばたき一回で、2センチしか浮かんでへん」


 ツバスケ「ワイ、いま……ツバメやなくて……ツ・バ・ブ・タ?」


 ツバコ「目ぇ覚ませ!!!」


 対策スタート!?しかし……

 ツバスケ「明日からダイエットする……明日から……な……」


 ツバコ「今やれぇぇぇぇぇ!!!!」


 ツバスケ(手羽でケチャップライスつまみながら)

「南国飯がうますぎんねん……ナシゴレンうめぇ……」


 小倉家にて(翻訳機 ON)

 美香「え、またツバスケさん太ったと?」


 美鈴「てかもう飛べんやろ、あの体型は」


 双子(爆笑)「お腹のとこ、影できとる!!“ツバ腹”やん!」


 優馬「メタボが過ぎて、もう**“飛ぶ”より“転がる”やな……」

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ツバメ夫婦のボヤキ リンダ @dokurobe-2gou

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