この物語は誰かの宝物になり得る

とんでもない完成度の物語です。

老人が、少年だったある時を思い出す……というお話です。

場面、場面が静かに切り替わりながら、音や温度感、表情を作る皺やそれに乗せた気持ちが伝わってくる文章です。

読みやすさを保ちながら、たくさんの情報が伝わってきますが、何よりも、主人公の少年の精神的な変化が感じ取れるのがいいですね。

現代日本の物語です。
しかし、まるで美しい挿絵の絵本をめくっているような、辛い現実に閉じ込められた少女が本物の妖精になった壮大な物語を読み終わったような不思議な感覚を与えてくれます。

誰かにとっての人生最良の物語になってもおかしくないくらいの傑作だと個人的に思います。