まず最初に、とにかくタイトルが秀逸。
『ドラム!ドラム!ドラム!ドラム!』
もうここからセンスの塊、内容に期待しかない。
書店の一番目立つコーナーに平積みされてていいレベルのタイトルです。
私なら間違いなくタイトル買いしますね。
ちなみにわたしが最後にタイトルで買った本は「イン・ザ・プール」です、ミソスープではありません。
もちろん内容も期待を裏切らない面白さで、速攻でシリーズ集めました。恐るべし伊良部一郎。
脱線しましたがタイトルの話。
ストレートにドラムが四人のバンドで、それ以外はギターの主人公がひとりです。狂ってます。
けどたぶんこれは計算された制約。
話を最大限面白くするための全てのエッセンスがこの中に詰まってる。
ドラムが四台もあると、何が起こると思います?
私は全く想像できませんでしたが、物語がスタートすると初っ端からガンガンその現実の壁にぶち当たっていくんですよ。
で、それを知恵や友情やコネやご都合の力でなんとかしていく。
最後はまあご愛嬌ですが、そんなこと言ったら全くご都合のないフィクションなんてほとんど存在しなくなります。
あなたはライヘンバッハの滝に落ちたホームズがそのまま生き返らなくてもいいタイプの人ですか? 違うでしょ?
四つのドラムって、ただ同じ楽器が四台並んでるんじゃない。
まずメンバーによってセットが違う、叩き方の癖、間の取り方、気持ちの入れ方、全部違う。
そして、その違いはそのまま四人のドラムス達のバックストーリーとリンクする。
彼らの持ち回が入るたびに「ああ、だから彼はこういうキャラなんだ」って腑に落ちる。
彼らの音が、技術じゃなく人生の延長に見えてくる。
四台が揃えば揃うほど、奇抜さが抜けて普遍的ドラマが前面に出てくる、不思議な構成です。
さらに特筆すべき徹底した裏方の書き込み。
搬入、設置、入れ替え、セッティング、段取り。
これらがドラム四台分のリアル。
音鳴らす前からもう腕だるい、時間削れる、体力削れる、財布も削れる。
さらに編集作業とか動画作成の裏方作業まで乗っかってくる。
締切ある、形式ある、時間との勝負で胃も痛い。
こういったディティールから作品の説得力は生まれます。
ドラム×4ギター×1の変態編成が「アリ」なんだって思わされる。
それはちゃんと本番に生きてくる。
これを描けるの、普通に凄いと思いますよ。
素人目線でも、単純に自分の知らない世界を見れるってだけでワクワクします。
そして音楽ものの華である演奏シーンも、ちゃんと汗かいて、音圧が来て、空気が押されて、客の体温が上がる。
学食でのバケツドラム対決とかもう鳥肌です、こいつら運命に惹かれ合い集まったスタンド使いかよ。
その熱の中に、会話の掛け合いと地の文ツッコミが入って笑えるのもいい。
しかも笑いのセンスが超上手い。
だから「このメンバーマジ最強」って感想になるのも自然でした。
主人公を含めた五人それぞれが個性的で、それでいてみんなが同じ方向を向いて、同じ音を目指して一緒に走る。
必要な時に前に出て、必要な時に引く。
先回りする人がいて、支える人がいて、気づいても黙ってる優しさもある。
四台のドラムがバラバラに暴れることなく一つの塊になる。
技術よりもまず、チームの強さがある。
あと途中のフェスがすごく良かったです。
体験したことある人ならわかる、客の熱、騒ぎ、テンションがそのまま洪水になって浴びせられる。
主人公の感情も前に出ちゃって、「今ならなんでもできる」っていう無敵感がこっちにまで伝わってきてノリたくなる。
終わりが近づく寂しさも含めてアツくなったし、お約束の打ち上げもちゃんと体験できる。
そしてこれだけは外せない。
この作品の根っこにあるのって、音楽にかける強い思い。
だから出オチに見せかけといて、中身は王道の青春になる。
笑えてアツい、無茶なのに信じられる。
そういう作品でした。
P.S
また私にとって、この作品は極上のラブコメでもありました。
言葉にはしないけどちゃんと伝わるラスト。
ボーナストラックのオチまで含めて全部美味しかったです。
ありがとうございました!
ドラムが4人? へえ、おもろそうやん。
と思って最後列で腕組みをし、彼らがステージに上がるのを待機していたつもりが、気が付けば最前列に。
見事に引き込まれました。
まず、演奏描写。
格好良い音とはつまりどのようなものであるか、きっちりと提示なさっている。
この時点で音楽ものとして信頼の置ける作品だと確信できます。
そして、登場人物。
皆濃い。それぞれが皆違った輝きを放ちキャラが立っているので読んでいて楽しい。
何より、ストーリー。
大きな目標に向けて、ドラム4人バンドは自分たちにしかできない表現方法を獲得するために模索し奮闘します。
熱い若者たちの頑張りに、こちらまで胸が熱くなるはずです。
音楽×青春の楽しい体験が待っていますのでぜひ手に取ってみてください。
かなり文章上手いです。
ドラム四人、ツッコミ入る状態での始まりですが、こりゃかなり面白い。
ちなみにBLやブロマンスとかではないです。
カラッとした友情や青春が感じられます。
ドラムばかりの個性豊かなメンバーの中で、主人公がしっかりリーダーとして認められる様は、読んでいて嬉しくなりますね。
尊敬されつつも仲間としての対等な関係も非常に爽やか。
音楽知識はトンとありませんが、そこらへんは抜きで楽しめます。
コンテスト通っても全く不思議ではないくらいの実力を感じています。
もちろん、人気ジャンルではないので大変だとは思いますが、青春ものが好きだという人は軒並み満足させるだけの力を持った物語です。
空気感を伝えられる高い技術の感じられる文章は、からりと澄んでいて、読んでいて気分が良いです。
エピソード11までの段階では、性格が悪い自覚のある私でも中々ケチをつけるのが難しいです。
始まりからしっかり読めば、技術的な高さを感じ取れると思います。丁寧に作られた作品です。
ここまで長々としたレビューを読んでいただけたなら、是非とも1話だけでも読んでみてください。
無料でこれくらいの文を読めるなら、お得でしかありません。
作者はかなり斜め上や斜め下から刺してくる方です。
そういう方がバンド物を書くわけです。長編で。
その結果がこれですよ。
いやぁ、もう完敗です、完敗。
設定勝ちでしょと言いたいところですが、描写力は確かなのでちゃんと話として面白く展開していくんですよね。なんでしょうこの破壊力。ジャンプとかで巻頭イケるやつですよ。
ドラム四人ですよ? 馬鹿なの? 馬鹿でしょ。
こんな設定で長編書こうとか、やりませんよ。凡俗なら。よくて短編です。
ところがどっこい、これでカクヨムコン長編参戦。
怖すぎません? 私だったら怖いです。
何が流行りとか、そんなものを全部蹴散らして、「これが面白いんだから読め」という圧を感じます。実際面白いんですよ。
そんな作者の自信と狂気と実力が織りなす音色は、読むだけで音圧を感じざるを得ません。ドラム四人なのに四人とも個性強すぎです。
これがものすごく小説が好きで、多読していて創造と想像の力に溢れる作者が出してくるものなのだと思うと、畏怖すら感じます。
エンタメ小説の神髄が、ここにあります!