第7話 ボタ山の狐火
とある古い炭鉱町で聞いた話。
以前は炭鉱で栄えたというその町には、あちこちにボタ山と呼ばれる人工の小山があった。
ボタ山とは、採掘の際に出た捨石(ボタ)の集積所のことだ。今はもう緑に覆われているのがほとんどで、あれがそうだと教えてもらわなければ素人目にはまったく普通の丘と区別がつかない。
このボタ山には、昔よく狐火が立ったという。これは、ボタに含まれるリンが自然発火してできるものだと当時から言われており、子供が怖がる程度のものだった。
しかしこの辺りに狐が多くいたのは事実で、狐火を科学的に説明する一方で、「狐が死人が盗みに来る」という迷信もまた、根強く語られていた。
こんな話が伝わっている。
ある通夜の晩、弔問客が途切れた夜半に、一人の男が訪ねてきた。家人はその人物に覚えがなかったが、目に涙を浮かべぜひ線香を上げさせてくれと言われれば、断る理由はない。男を家にあげ、遺体の前に案内した。男は、ずいぶんと長い間手を合わせていたという。そして不思議なことに、その間その場にいたものは全員男に釘付けになっていた。目を逸らせなかったそうだ。
ようやく拝み終わると、男は拝んでいたときとは真逆の他人行儀で、名も告げずにそそくさと帰ってしまった。男を見送った家人が首を傾げながら部屋に戻ると、忽然と遺体が消えてしまっていたのだという。
この男は狐で、人間に化けて遺体を盗みに来たのだといわれている。化けた狐が線香を上げて家人の目を集めている隙に、仲間の狐がこっそり遺体を盗み出すのだ。
そういうことがあるので、通夜の晩であっても夜中の弔問客には対応してはならない、というのがその地域のルールだった。遅くとも夜の九時を過ぎれば玄関を閉ざし、親兄弟が訪ねてきても明けてはいけないのだそうだ。
人が死んだ夜は、ボタ山で狐火がいつもより多く燃え、いつもは真っ黒な山が、青や赤や黄色のとりどりの光に彩られていたという。
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実葛怪異帖 凧カイト @kite3783
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