第17話 西国南東部隊長ヘリオ

魔界にも似た草原が広がっている。

ポルト・アリアは街の周りを壁で囲んでいるようだ。少なからずの要塞のような機能を有しているらしい。

草を風がなびく音以外にもどん、どん、と音が迫ってくるのを感じた。

「すごい足音」

チューンも気付き、その方を見る。そこには白銀のヘルメットのような甲冑を被り行進している。

1000人。1000人ってこんなに多いのか。数字だけと実際に直接見た感覚は別物だ。その迫力に圧倒される。

クリストムも生唾かたずを飲み、彼らの動きを見守っている。


これから始まるであろう大規模な軍事行動。その予感に前世からの嫌な感覚が背中を伝った。


1000人の兵士は自分たちが分けた5つのグループに分断。クリストムもとい自分たちの前へ。

その兵の集団のうち一人が抜け出て、クリストムの方へ向かってくる。

「こんにちは」

現れたのはチューンにも似た金髪。少女漫画で言うところ「王子様」にも似た姿。

白のマントを翻しツカツカと歩く。腰に携えられているのはバイオリンだろうか。弦と一緒だ。

「ええと。君がギルドの道案内人?」

同年代だろうか。かなり若い。その男はクリストムに握手を求める。


その流れるような所作に彼も少したじろぎ、応える。

「このパーティ長のクリストムだ。パートはトランペット。一応Aランクだ」

「なるほど。クリストムくん、か。どうぞ宜しく。僕はウェスタ南東部隊長のヘリオです。首都出身でこの辺は疎くて、ね。さてさて」

彼はパンと拍手を打つ。

「始めましょうか」

兵士たちも同じく一拍。そして。

「オーッ!」と巨大な雄叫びが上がる。

デーモン族討伐クエストが今始まる。

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魔王でビート!ビート!!ビート!!!(音楽=魔法となった世界で) @Edonnn

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