第16話 パーティ編成

再びギルドを訪れたのは、太陽が登って間も無くの時分であった。

「マオ様。起きてくださいまし」


起こしてくれたチューンは昨日とは異なり、まるで初めて会った時のようにシャンとしていたのだった。


早朝にもなると流石に静けさが街から感じられた。こうしてみると、

石畳で道路は舗装されているし、ゴミは多少散らかっているものの、美しい街並みであった。

そしてギルドの前にたどり着く。


扉を開けるとすぐさま視線が俺たちに集まる。

無言で席に座る人々。彼らが今回のクエストを受ける他の冒険者なのだろうか。


「とりあえず、座ろうか」

もとより、俺たちはここにいる人たちと目的が違う。

彼らは魔族退治を行うのだが、自分達はそのターゲットの足取りを掴むことであった。

そして、俺は魔界の王、魔王として、彼らを救う務めがある。そう、その責任があるのだ。だからこそ、目立ってもいけない。


「さて、16、17、18。よし、これで聞いていた人数は揃ったな。では諸君聞いてくれ」

そして一人がみかん箱のような箱の上に立ち上がった。

楽器。具現化されているのだろうか、ラッパを腰に携えている。


「俺は過去に2回依頼を受けており、今回の大パーティのリーダーになるクリストムだ。よろしく頼む」

特に一団は返事はしない。急造のチームだから仕方がないのかもしれないから、団結感はまだない。


「……まあ、いい。ここにいるのは少なくとも腕利きの冒険者、楽器使いミュージシャン、傭兵の類がいるのだろう。各々が依頼のために動いてくれればそれでいい」

「なあ、チューン。ミュージシャンって、そのままの意味で受け取っていいのか?」

「そのままで、良いというのが分かりかねますが、私のように楽器を召喚し、音力を使う人のことを指す言葉ですが……」

彼女もヒソヒソ話に付き合ってくれる。しかし、このクリストムと名乗る男は相当耳が良いらしく、しっかりと自分達の方を睨むのだった。


「ごほん。ええと」

彼は咳払いをして続ける。


「そして、今回、俺たちクエストのメンバーはあくまで、助っ人に過ぎない」

その言葉を聞いた時、少し部屋がどよめいた。

「どういうことだ。俺たちは数合わせってことかい?」

いかにも荒くれモノといった男が尋ねる。


そして意外にも、その質問に対してクリストムは首を縦に振って答えた。

「魔族討伐において我々パーティは西国軍の補助、前線支援を行う」

「——西国軍だと」

軍、という言葉がどきりと心に刺さる。前世で最後に見た光景、空を舞う戦闘機の姿がまぶたの裏に現れる。


やはり、ここでも戦いは行われているのだ。そのことをあらためて思い知らされる。

「どうやら領主殿は今回ガチらしい。近くの駐屯所から西国の兵士1000人も招集し、今日の午後にでもこの街に到着するう予定とのことだ。俺たちはポルト・アリア周辺にも詳しい。俺たちが道案内を行い、圧倒的物量でかねてより噂の悪魔様を討伐する、というわけだ」

千人。なかなかの数だ。だが、その情報から一つの確信に至る。


ドライブは生きている。でなければ、ここまでの人数を招集するわけがない。

そうして、組み分けをされていく。

メンバーの中でも、20人を5チームにさらに分ける。しかし、運が良いのか悪いのかリーダーであるクリストムと一緒のチームとなってしまった。


クリストム、他に屈強な男、ひ弱そうな女、そして俺とチューンの5人で決定される。

そして、別れたチーム毎でポルト・アリアの外に出た

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