09 エピローグでも勝てない
「あ……風邪、うつしちゃうかも」
離れた僕らはとにかく照れくさくて、誤魔化すようにそんなことを口走った。
白川さんも上気した頬の熱を冷ますようにパタパタと手で扇ぎながら、「そうでした」と眉を下げる。
「でも私、こう見えても丈夫なんですよ。だからちょっとくらい大丈夫です!」
「そう……? もし体調を崩したらすぐ連絡くれよ。今度は僕がお見舞いに行くから」
「本当ですか? それはちょっと、楽しみです」
ふへへ、と頬が緩む白川さん。かわいい。小動物みたいだ。どうしたことか、さっきから庇護欲が止まらない。
それと同時にちょっぴり、庇護欲とは相反する、からかってやりたい衝動が僕の中を駆け巡った。
「お見舞いするなら……白川さんってシチュボ? 的なのがいいんだっけ?」
『ぴあゃぇ』
声にならない心の中とはいえ、すごい音で鳴いたな。
「い、いつからそれを!?」
「だって白川さん、いつも賑やかだから……どういうのがいい? やっぱり下の名前?」
「な、な、名前って……」
「芽衣」
「ひ、」
耳元で囁けば、面白いくらい体を震わせて、白川さんは真っ赤になってしまった。
かわいい……。
「ねえ、芽衣。他にはどういうのがいいの? 弱った芽衣を元気づけるときは、どうしたらいい? どうしてほしい?」
「~~~~!!」
涙目になった白川さんが僕をクッション越しにボスボスと叩いてくる。
痛くはないが、そこそこの衝撃は来る。
僕は思わず吹き出してしまった。
「あはは。ごめん、ごめんって。でもそれくらいなら、僕も手伝えるかなって……」
「――彼氏相手なら、そんなんじゃ足りませんよ」
「っ」
クッションをどかした白川さんは、急に耳元でそう囁いてきた。ゾクリと体が甘く痺れる。
おそるおそる見上げた僕に。
ニコリ。
白川さんが微笑む。
どこからどう見ても楚々としているのに、なぜか凄みを感じるのは気のせいじゃないだろう。
「覚悟してくださいね、悟くん」
――参った。
僕の彼女は相当強いらしい。
心の声が聞こえる僕の想定を、いつもいつも上回ってくるのだから。
その妄想、僕の脳内で音漏れ中です。~心が読める僕と、声フェチ妄想ヒロインの君~ 弓葉あずさ @azusa522
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