探偵インタビュー(無編集映像).mp4

 八重山海珠はインタビュアーに向き合い緊張した面持ちである。

 一方で後ろにいる3人のメンバーはラフで気負わない態度で座っている。


―①お名前と年齢、性別を教えてください。

 「八重山海珠やえやまみことです。22歳、女性です。」

 

 八重山が緊張した声で答える。

 その後少し間が開いて江南が口を開く。


 「これ僕達も解答した方が良いのかな?事業部長の江南創士えなみそうしです。

 35歳、男性です」


 「技術リーダの壬午曜じんごようです。江南が35やから……33歳か、男性や」


 「チームメンバの平山玲ひらやまれいです!26歳、女性です♡」


 メンバー各々が自己紹介する。

 その後、八重山がポツリと呟く。


 「江南さんと壬午さんの年齢、初めて聞いたかも……」


 「あれ?そうだったっけ。そういえば歓迎会の時とかに改めて自己紹介すればよかったね」


 「てか壬午さん自分の歳覚えてないんですか?」


 平山が壬午を肘で小突く


 「歳とかどうでもええし……覚えてんのめんどうやろ。江南マイナス2や」


 「そんな寂しいこと言うなら今度から誕生日会強制でやりますからね!?」



―②貴方は探偵ですか? 他に就いている職業はありますか?

 「探偵では無いです……株式会社ストリテクノロジーという会社の、怪異ソリューション事業部という部署に所属しています。みなさんはその上司や先輩です。」


 「今はOJT社員として仕事をしてくれているよ。まあこの部署のことは秘密なんだけどね」


 「OJTトレーナーは私が担当してます!八重山ちゃんはすごく頑張ってくれてますよ!」


 平山が手を上げて答える。



―③よく遭遇するのは人が亡くなる事件ですか? 亡くならない事件ですか?

 「多分、亡くなった方もいると思います。失踪したまま行方がわからない、とか。

 身近な人は何とか助けられたりしたんですけど……」


 「八重山ちゃん、共感しやすいから……あんまり気に病んじゃダメだよ!」


 平山が八重山の肩に触れながら心配そうに顔を覗き込む。


 「確かに、負担の大きい役回りをしてもらっていることが多いかもしれないね。あまり無理しないようにね」


 「……はい」


 八重山は控えめに頷く。

 何も言わない壬午もその八重山の様子を慮るように見つめている。



―④助手はいらっしゃいますか? 捜査を手伝ってくれる人はいますか?

 「部署の皆さんのお陰です。私はまだまだわからないことがいっぱいで……」


 自信がなさそうに答える八重山に、部署のメンバーたちが口々に彼女を支えるような言葉を告げる。


 「でも君の能力と、仕事に対する責任感は案件の解決に大いに役立ってるよ、自信持って」


 「あんたが案件に喰らいついたから解決出来たこともあったやろ。

 いつも他人の為に入れ込みすぎるのは良くないけどな」


 「そうだよ!八重山ちゃんいつも頑張って案件に取り組んでくれるから、私も頑張らなきゃってなる」


 「あ、ありがとうございます……」

 

 八重山は少し照れくさそうにしながら椅子に座り直す。


 「OJTの期間はまだ半分以上残ってるし、

 わからないことがたくさんあっても全然大丈夫だからね!」


 平山はずっとニコニコしながら八重山を見つめている。

 後輩が出来て嬉しい、という気持ちが見るからに溢れ出ている。横目で壬午が呆れた視線を投げているが気付いていないようだ。

 八重山は苦笑しながらも「ありがとうございます」と頭を下げる。



―⑤警察官や刑事さんの知り合いはいらっしゃいますか? その方とは仲良しですか?

 「い、いないです。今まで警察の方と喋ったのは……夜に未成年と間違えられた時くらいで」


 八重山は恥ずかしそうに答える。確かに彼女は少し童顔ではある。


 「八重山ちゃん可愛いもんね~」


 「はい、セクハラ。てか……あんたはおりそうやな(江南の方を見る)」


 「さあ、どうだろうね?」


 江南はニコニコとしながら首を傾げる。

 柔和に見える彼はその一方で何か底しれないものを抱えているような雰囲気を感じるが、それが何故だかはわからない。

 そして壬午と江南の二人はどうやら長い仲のようであることはわかる。



―⑥自分の探偵としての得意分野は何でしょうか。

 「得意分野……電子機器から、その中に残ったを聞くことが出来ます。これが何なのかは自分でも良くわからないんですけど」


 「八重山さんの力にはいつも助けられてるよ」


 江南が心底、という面持ちで話す。

 

 「はあ、俺はあんま聞き過ぎん方が良いと思うけどな。あんたの性格やと気ぃつけんと悪いもんに引っ張られてええことないで」


 壬午が呟く。


 「ほんと珍しいよね壬午さんが誰かを心配したりするの」


 「別にええやろ。危なっかしいやつは止めた方がええと思うだけや」


 平山は壬午の顔を見てニッコリと笑いそのまま黙った。その顔に壬午は顔を顰める。



―⑦自分が解いてきた中で自慢できる事件はありますか?

 「自慢……私、一人前の社員になれているんでしょうか?」


 「十分過ぎるくらいだよ!OJTの評価もかなり高いから心配しないで!」


 平山は力説する。


 「最近の案件の解決には八重山さんが大きく貢献していることに間違いは無いよ。自信持って」

 

 江南がやんわりと言う。八重山は「そうでしょうか……」と納得半分の様子で俯く。



―⑧探偵としての目標はありますか?

 「探偵として?は無いですけど、ちゃんと部署のメンバーとして力になりたいです」


 「向上心があるのはええことや」


 壬午と平山は二人で頷く。


 「うんうん、てか本当に壬午さんは八重山ちゃんのことよく褒めるよね。壬午さんが他人を褒めてるのなんて他に見ないよ」


 「技術関連俺一人で抱えてるんや、後進育てて何が悪い?」


 「ええ!八重山ちゃんを壬午さんに渡すのは嫌だよ~」


 「はあ?」


 まるで取り合いをするような二人に八重山は苦笑することしか出来ないようである。

 江南が「まあまあ」と取り成す。


 「確かに壬午くんも負担が大きくなりがちだから少し考えないとね……」



―⑨事件を解くのは楽しいですか?

 「楽しくは、ないです。苦しんでる人の声を聞くことが多いので……自分も苦しくなってしまって、助けられない自分が嫌になったり、そんなことばっかりです」


 「さっきも言ったけど、あんま入れ込みすぎんな。自分に出来ることやって胸張っとけばええんや」


 「僕も出来る限りフォローはするから、辛かったらちゃんと言っていいからね。

 案件を通じて、八重山さんの”共感能力”っていうのかな……がだんだん強くなっているような気もするんだ。自覚は無いかもしれないけど少し気を付けてみてね」


 「……はい。体調面も精神面もご迷惑おかけしないように、早めに相談するようにします」


 八重山は真剣に答える。

 周りのメンバーからの気遣いとは反対に、あくまでも仕事への貢献として体調管理のことを考えているように見える。



―⑩探偵同士の謎解き大会があるとしたら、行ってみたいと思いますか?

 「謎解き……?あんまりパズルとかそういうのは得意じゃないんですけど」


 「ねえ、この4人チームでリアル謎解きとか行ったら楽しそうじゃない?江南さん!今度企画しましょうよ!」


 「はあ?まあ謎解きは嫌いやないけど」


 「あはは、確かに面白そうだね。年末休暇のときにでも日程調整しようか」


 思わず話が弾む4人

 

 「確かに壬午さんって謎解き上手そうですよね」


 「だよね~パパパーっと解いちゃいそう」


 「二人は俺のことなんやと思ってんのや」


 呆れた顔をする壬午に八重山は、


 「技術的に凄く頼れる、頭のいい人だと思ってます」

 

 と真面目に答える。

 壬午はここまで真面目に答えられると思っていなかったようで、


 「そうかいな……」


 とだけ答える。


 「え?壬午さんもしかして照れてます~?」

 

 顔を覗き込む平山に壬午は肘鉄を入れた。



―⑪人を傷付ける犯罪はやはり許せませんか?

 「許せないです。でも多分、私達が立ち向かっている怪異は人が意図的に起こしていても法で裁けないと思うんです……だからこそ止めたいんですけど」


 「そうだね、僕はだからこそこの部署を立ち上げたからね」


 江南はどこか遠くを見るような目で話す。


 「なかなか話が共有できていない部分があって申し訳ないんだけど、そのうち君たちにもちゃんと話すよ。この部署で取り扱っている案件の本質って言うのかな……本当の目的について」


 メンバー全員の顔を見回しながら江南ははっきりと言う。

 先程までの雰囲気から一転してピンと張り詰めた真剣な雰囲気になる。



―⑫これからの意気込みをどうぞ!

 「一人前の社員になれるようにこれからも日々がんばります。よろしくお願いします」


 八重山が頭を下げる。


 「うん、これからもよろしくね」

 

 「ああ、よろしく頼むわ」


 「よろしく!」


 メンバー全員が八重山へ笑顔を向ける。

 八重山は少し照れくさそうな顔をしてもう一度頭を下げた。



インタビュー映像はここで終了している。

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怪異ソリューション事業部 雑多資料 常陸 花折 @runa_c_0621

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