透き通るような秋の情景描写に、一瞬で引き込まれました。川を挟んで佇む少女と、失われた記憶を探る「俺」。幻想的な妖怪たちの気配と、どこか懐かしくも遠い少女の言葉が、胸の奥をチクリと刺します。「帰らなきゃいけない場所」と「帰れない場所」。その境界線で交わされる会話の端々に、秘められた深い愛情と後悔が滲み出ていて、ラストの一文を読み終えた時、タイトルである『玄鳥去(つばめさる)』の意味が鮮やかに、そして切なく心に響きました。短編ながら、一本の美しい映画を観たような余韻に浸れる作品です。
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