ひと雫

亜香里

ひと雫

この命に

終わりはないの

ただ、かたちを変えて旅をする


ある日は広い海の

深く青い胸に抱かれ

ある日は陽に照らされて

空へ昇る蒸気となる


風にゆられて

白くふわりと雲になり

空からまた ひとしずく


凍る日もあるの

氷となって時を止め

山の静寂に眠ることもある


ある日は芽吹いた葉の中に

ある日は子どもの笑顔の汗に

生き物の中で命の一部となり

また海へと帰っていく


わたしは巡る

世界をめぐる

姿を変えて

記憶を宿しながら


そう

わたしは水

名は雫

ずっと変わらぬ 旅人

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひと雫 亜香里 @akari310

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ