猫カフェ

@yoinokaze

第1話

ふと仕事を始めて安定してきたのでなんとなく昔の日記を読んでみようと思い、開いてみる

日記にはこう一言

「猫カフェをやる」とやる気のないどこか疲れを感じさせる文字で書かれていた

この時のことをすこし思い出してみよう


ただただ疲れた 何も心に響かないそんな気持ちだ

ふと学校帰りの電車に揺られながら俺[東 隆一]はそんなことを考えていた

仲の良い先生と友達で話している時に自分だけ何も誇れるようなことが無いと気づいた

いや、気づいてしまったとでも言うべきか

1人は音楽が好きで自力で作った、もう1人は話を書いているというではないか

この2人に比べて自分は何も0から1を生み出すことをしていない

いつもなら「あいつはあいつ、俺は俺」と気にしていなかっただろう、だが今は疲れかストレスからか細かいようなことも気にしてしまう

2人に俺は引け目というか劣等感のようなものを抱いていた

今まで何かに命を救われたことがあったろうか、何かに人生を賭けてもいいと思えるほどに熱中したことがあっただろうか

自分は今まで何事も本気でやらず浅く広くものに触れてきた人間なのだ

『自分らしく生きる』中学一年生の頃から人生の目標としてきたが、今ふと思う

俺は今まできちんと自分の意思で決めてきたようなことがあっただろうか

親や周りの流行りなどに影響されてきたことばかりではないか

こんな俺にはたして人生のここぞというところで物事を決める決断はできるのだろうか

そんなことを考えながら帰っているといつも餌をやっている野良猫が「ご飯くれ」とでも言いたそうな様子でこちらに来た

玄関から猫の餌を持ってきて、餌をやり

ただ何でもいいから癒されたかったのだろう

昔から好きな猫が餌を食べている様子を見たかった

駐車場の縁石に腰を下ろし猫を見る

吹いてきた夜風が9月中盤の暑い時期にはちょうどいい冷たさで吹いた

ふと思った

これからも俺のような人が出てくるかもしれない

そんな人たちの為にも人を癒せる場所

例えば猫カフェのような場所を大人になってやりたいと思った


深く思い出して感情に浸っているとカランコロンと心地よい鈴の音が鳴った

お客さんが来たようだ

「こんばんは」と一言

こちらもこんばんはと返す

今日はOLさんのようだ

彼女はどこかストレスに押しつぶされそうな疲れた顔をしている

さぁ今日もお悩み相談猫カフェ「therapy」の開店だ

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