ある夕方の帰り道、ふたりの母と子が帰路についている。その足取りは対照的である。本作はこんな感じで始まるのですが、いったいなぜ、こうも対象的なのか。出だしから引き込まれます。
子どものほうは、何やら大人びているようで、無邪気な発言を繰り返します。死について、遊びについて。恐ろしいほどに自由に語ります。そしてその過程で、たびたび「線」について言及される。
「線」とはいったい、何の「線」なのか。
作品を通してその意味を知った時、読者はこの社会を成り立たせているものについて考えさせられます。
お勧めです。未読の方はぜひ手に取って、「線」とは何か、「線」により何が失われてしまったのか、色々と考えてみてください。
この一言に込められた言葉の意味が、とても深くて重い……!
この言葉を絞り出すのに、いったいどれほどの言葉が頭の中で浮かんでは消え、どれほどの感情が心の内でせめぎ合ったことでしょうか。
そこに託した言葉の意味は、祈りか、それとも諦めか。
どちらでもあるかのように思えますし、またそれとはもっと違うもののようでもあります。
いずれにせよ、この子供が将来待ち受けるものは、一般の子供のそれとは異なった、いくつもの困難があるものだと思います。
その困難を乗り越え、「幸せ」を掴み取ってもらいたいものです。
短編ではありつつも、読み込むごとに様々な解釈が生まれ、読み手によっても感じるものが変わってくる、とても深いテーマを持つ、実に味わい深い作品です。
是非とも一度は読んでいただき、二度三度と噛み締めるようにして読み直していただきたいです。