概要
自慢できる人生ではなかった。六十一で、はじめて何かを作った
三十八年勤めて、出世は課長止まり。遊びもムダ遣いもせず、貯金だけが残った。自慢できる人生ではなかった。
定年後、山あいの集落に土地八百坪と築四十七年の平屋を三百八十万円で買った。水道はない。
ソーラーパネルで電気を、雨水をろ過して水を、百坪の畑で食べ物を。少しずつ自分で作っていく。
ただ、うまくはいかない。雨が四日続けば冷蔵庫は止まる。冬の発電量は夏の四割。畑は鹿に一晩で全滅した。透明にろ過した雨水からは大腸菌が出た。
三年で三百二十万円かかった。元は取れない。二十年以上かかる。そのとき俺は八十一歳だ。
そして、三日間の停電が来た。
全5話・完結。
定年後、山あいの集落に土地八百坪と築四十七年の平屋を三百八十万円で買った。水道はない。
ソーラーパネルで電気を、雨水をろ過して水を、百坪の畑で食べ物を。少しずつ自分で作っていく。
ただ、うまくはいかない。雨が四日続けば冷蔵庫は止まる。冬の発電量は夏の四割。畑は鹿に一晩で全滅した。透明にろ過した雨水からは大腸菌が出た。
三年で三百二十万円かかった。元は取れない。二十年以上かかる。そのとき俺は八十一歳だ。
そして、三日間の停電が来た。
全5話・完結。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!心地よい読み応え
この作品の主人公は、あまり喋らない。感情をぶらさない。
何かに怒りをぶつけることも、何かに嘆き悲しむこともない。
こちらに積極的に語りかけてくることも、自分の中で大げさに問いかけることもない。
端的に言えば、枯れている。
それでも、生きている。
リアルを感じさせる質感の描写と、淡々とした語り口。
大きな展開はないが、都会で何となく夢見るようなシチュエーションの「現実」が静かに語られる。
それが何となく心地よい。
何のゆかりもない土地で、偶然となりに腰掛けた老人が、どこを見ているか分からない目で独白している。そんな感覚。
大きなストレスもカタルシスもない、ただ不思議と静かに聞いていられる…続きを読む