この作品の主人公は、あまり喋らない。感情をぶらさない。
何かに怒りをぶつけることも、何かに嘆き悲しむこともない。
こちらに積極的に語りかけてくることも、自分の中で大げさに問いかけることもない。
端的に言えば、枯れている。
それでも、生きている。
リアルを感じさせる質感の描写と、淡々とした語り口。
大きな展開はないが、都会で何となく夢見るようなシチュエーションの「現実」が静かに語られる。
それが何となく心地よい。
何のゆかりもない土地で、偶然となりに腰掛けた老人が、どこを見ているか分からない目で独白している。そんな感覚。
大きなストレスもカタルシスもない、ただ不思議と静かに聞いていられる。
不思議な読書体験。独特の心地よさ。
あなたもそれを、感じてほしい。