概要
その部屋の代金は、コーヒー一杯ぶんです。
坂の途中に、珈琲屋がある。
奥には、窓のない部屋がある。
そこでは、話していい。
黙っていてもいい。
答えは出ない。
たぶん、出してはいけない。
二十年ぶんのノートがある。
書いてあることは、だいたい正しい。
だから、少し困る。
借りた言葉は、よくできている。
言わなかった言葉は、なかなか消えない。
正しかったことは、何も起こさない。
その部屋を、常連は「隠れ家」と呼んでいる。
家族の誰も、そうは呼ばない。
◇
聞いているのは、高校二年の岡湊。
母が二十年かけて書いた六冊のノートのとおりにやっている。
自分で考えた言葉は、まだ一つも使っていない。
十一月の水曜日、同じ学校の柚木遥が入ってきた。九つ上の人に送るメッセージを、
半年のあいだ
奥には、窓のない部屋がある。
そこでは、話していい。
黙っていてもいい。
答えは出ない。
たぶん、出してはいけない。
二十年ぶんのノートがある。
書いてあることは、だいたい正しい。
だから、少し困る。
借りた言葉は、よくできている。
言わなかった言葉は、なかなか消えない。
正しかったことは、何も起こさない。
その部屋を、常連は「隠れ家」と呼んでいる。
家族の誰も、そうは呼ばない。
◇
聞いているのは、高校二年の岡湊。
母が二十年かけて書いた六冊のノートのとおりにやっている。
自分で考えた言葉は、まだ一つも使っていない。
十一月の水曜日、同じ学校の柚木遥が入ってきた。九つ上の人に送るメッセージを、
半年のあいだ
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