概要
忘れられた場所は、白紙に戻る。女は一人、町を塗り戻す。
澪ノ町では、忘れられた場所が白紙に戻る。住人はみな町を離れ、二十年前の「ある事件」を機に、誰も思い出さなくなった。ただ一人、灯だけが町を歩き続ける。彼女の記憶が、暖簾の朱、路地の群青、祭の金彩を、手彩色の古地図のように塗り戻していく。
塗り戻すたび、灯は代償を払う。恋人の声、母の手、自分の本名——直前に色を持った具体的な何かを、ひとつずつ差し出す。歩くたび町は色づき、灯の身体は白くなっていく。
それでも彼女は、たった一つの四角だけは決して塗らない。手彩色の世界の中で一点だけ、フォトリアルに残る四角——娘・澪の顔の記憶。
二十年前、この町に何があったのか。なぜ灯は、名も知らない町を一人で覚え続けるのか。町の名「澪ノ町」と娘の名「澪」が、同じ音であることに、灯は向き合うことになる。
塗り
塗り戻すたび、灯は代償を払う。恋人の声、母の手、自分の本名——直前に色を持った具体的な何かを、ひとつずつ差し出す。歩くたび町は色づき、灯の身体は白くなっていく。
それでも彼女は、たった一つの四角だけは決して塗らない。手彩色の世界の中で一点だけ、フォトリアルに残る四角——娘・澪の顔の記憶。
二十年前、この町に何があったのか。なぜ灯は、名も知らない町を一人で覚え続けるのか。町の名「澪ノ町」と娘の名「澪」が、同じ音であることに、灯は向き合うことになる。
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