概要
引き継ぎは丁寧に。それが二十年勤めた者の礼儀ですわ
「お前の代わりなどいくらでもいる」
王太子殿下はそう仰って、真実の愛だという男爵令嬢を隣に立たせた。結構でございます。
六歳で婚約者に上がってから二十年。病に伏せる王妃陛下に代わって、社交の裁定も、冬の炭の割り当ても、諸侯夫人の序列も、この手で回してきた。世に言う〈王妃業〉である。
「承知いたしました。では、王妃業全437項目、後任の方へ丁寧にお引き継ぎいたします」
翌日から、わたくしは丁寧に引き継いだ。
第一項、冬の炭の割り当て。――三日後、王宮の北棟が冷えた。
一項目お渡しするたび、王宮の何かがひとつ止まる。後任の令嬢は三日で音を上げ、王太子殿下の机には陳情が積み上がる。そして、隣で見ていた国賓の王弟殿下だけが、なぜか目を輝かせていく。
「代わりはいくらでもいる」が本当かどう
王太子殿下はそう仰って、真実の愛だという男爵令嬢を隣に立たせた。結構でございます。
六歳で婚約者に上がってから二十年。病に伏せる王妃陛下に代わって、社交の裁定も、冬の炭の割り当ても、諸侯夫人の序列も、この手で回してきた。世に言う〈王妃業〉である。
「承知いたしました。では、王妃業全437項目、後任の方へ丁寧にお引き継ぎいたします」
翌日から、わたくしは丁寧に引き継いだ。
第一項、冬の炭の割り当て。――三日後、王宮の北棟が冷えた。
一項目お渡しするたび、王宮の何かがひとつ止まる。後任の令嬢は三日で音を上げ、王太子殿下の机には陳情が積み上がる。そして、隣で見ていた国賓の王弟殿下だけが、なぜか目を輝かせていく。
「代わりはいくらでもいる」が本当かどう
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