短編「ゆくえ」

継守 直刃(つぐもり すぐは)

第1話

今思えばあれがきっかけだったんだ。彼女へのプレゼント探しにショッピングモールに行った時、たまたま出店してたマルシェ。ふと目に止まったのは可愛らしいピアス。ピンクの石にゴールドの飾りやチェーンが調和していて華やかさの中に品の良さを感じた。

「こんにちは、よかったら見ていきませんか?」

話しかけてきたのは20代半ばくらいな女性。俺と同じか少し若い店員さんかと思った。

「こんにちは。これ、色合い綺麗だなって思って」

「これはローズクォーツを使ったピアスです。よかったらお手に取って見てください」

そう言って手渡されたピアスを見てみると、接続部分が丁寧に加工されているし、揺れるチェーンが素敵だった。

「これ…手作りですか?Tピンの処理も上手だし…」

「Tピン知ってるってことは、お兄さん、もしかしてアクセサリー作りやってるんですか?」

「ええ、昔ちょっとだけ。でもこんなに綺麗にできなかったです」

「へぇ、そうなんですね!どんなの作ってたんですか?」

「ネックレスとかストラップとか、そんなに大したものじゃないですよ」

「いやいや、ネックレス作るのって長さ考えなきゃだから難しいですよ!」

そんなこんなでアクセサリー談義が弾んだ。しばし話した所で他のお客さんが声をかけてきた。

「すみません、これすごく好きなんですけどイヤリングないですか?私、穴開けてなくて」

「ここにはないですが、すぐ加工できますよ。よろしければお作りしましょうか?」

「本当ですか?お願いします!」

店員さんは展示台の下から可愛らしくデコられたツールボックスを取り出すと、ささっとイヤリングに付け替えた。

「ありがとうございましたー」

「すごい、手際がいいですね」

「いえいえ、私なんてまだまだ。でも、買ってくれた人が喜んでくれるのが一番なんで」

「これ、包んでもらえます?」

「こちら、ピアスのままでいいですか?」

「はい、大丈夫です」

「では少々お待ちください」

待ってる間に他の作品を見ていると、インスタのアカウントが書かれたカードがあった。

「ムーンスター…」

「あ、それ私のインスタです。作品を載せてるのでよかったら」

「いただいていきます。かわいいラッピング、ありがとうございます」

「とんでもないです、ありがとうございましたー」

予定変更にはなったけど、これはこれで彼女の好みっぽいしいいものが買えたと思っていた。この時までは。

帰宅して名刺を読み込むと、店員さんのアカウントが開けた。顔出しはしていないけれど、今日のマルシェの告知や作品がたくさんアップされていた。

(すごいな、結構作ってるしみんな綺麗だ)

俺はシンプルな作りが多いけど、彼女はゆらゆらする可愛らしい作品が多い。

(一応、連絡しとくか)

今日のお礼と作品を見た感想をDMし、そのままフォローした。少しして返答があった。

「こちらこそ、今日はありがとうございました!インスタ見ましたがレザークラフトやってるんですね!かっこいい作品多いです。近々別の出店予定があるので、ご都合つけば彼女さん(もしくは奥様)とお越しください!」

たしか、こんな内容だった。そのままお互いの作品や創作にかける想いなんかを送り合った。そうするうちに、仕事で失いかけていた創作熱が呼び覚まされていった。

「なぁ、今日誕生日…だよな。これ、君に似合うかなって」

「ありがとう!開けていい?」

「ああ、気に入ってもらえると嬉しいけど」

付き合って半年、彼女の初めての誕生日。期待に満ちた彼女の笑顔は段々と曇っていく。

「…これ、ピアス?」

「そう、可愛いし君に似合うかなって」

「…気持ちは嬉しいんだけど、これ手作り…だよね?」

「そう、すごく上手にできてるよね」

「ごめん、私ブランド物が好きなんだ」

「そっか、悪い。じゃあこれから…」

「ううん、もう大丈夫。たぶん、あなたとは合わないと思うから。ごめんなさい」

そんな感じの別れだったと思う。なぜか、悲しくはなかった。彼女の反応を見て、追いかける気持ちはなくなっていた。ちょっと重い足取りは間も無く軽くなった。

「あ、こんにちは!プレゼント、うまくいきました?」

「こんにちは。見事に振られちゃいました」

ダサカッコ悪いけど、事実だから仕方ないよね。

「そうでしたか…すみません、お役に立てず」

「いや、誰も悪くないですよ。合わないタイプだとわかってお互い良かったと思います。それに…」

「それに?」

「あなたと話して、フラれて決心がつきました。俺も創作、再開します」

「もしかして、前に話してたレザークラフトとか、アクセサリーですか?」

「ええ。インスタ見てて、やっぱりやりたいなって。それでなんですけど…俺の作品、見てもらってもいいですか?」

「もちろんです!喜んで!」

「ありがとうございます。仕事しながらだから時間はかかりますけど…夢、諦めたくないなって」

「夢…?」

「自分のお店を持つんです。工房兼ショップの。できれば2階は自宅みたいな」

「えー、すごいいいじゃないですか!お店できたら、共同出店させてもらおうかな」

「ぜひ、お願いします」

「メインはレザークラフトとアクセサリー、私はネイルチップやレジンを置かせてもらえば被らないし楽しそうですね」

「ですね、俺だけじゃシンプルすぎるから華やかな作品があると映えると思います」

「確かに、お互いが補い合う感じでなんかいいですね」

フラれたばっかりなのに、なんかワクワクしてた。物件はじいちゃんのお店譲って貰えばなんとかなるし、あとは俺の本気度合いだな。この人とも、補い合って共同でやっていきたいしさ。

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短編「ゆくえ」 継守 直刃(つぐもり すぐは) @White_Days_46

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