その二 「えぇ話があるんや」

(蹴り倒した地蔵から出て来たのは、

地獄の閻魔を彷彿とさせる恐ろしい形相をした黒ずくめの着物を着た初老の男。

腰には二本の日本刀を携え、その眼光は今にも二人を切り殺そうというものだった。)



死神「俺の大事にしとった石像に何してくれとんねんコラァ!」

和馬「ま……まさか天国から化けて出て来たんか……!?」

死神「いやそこ地獄からやろが。ってちゃうねん!」

拓真「和馬さっきから誰と喋っとんねん?」

死神「俺はあの石像に住み憑いとる死神や……」

和馬「ほ、ホンマでっかTV……?」

死神「せや……どやぁ? 怖いやろぉ?」

和馬「えらい金かけてそうなメイクやなぁ……なんぼしたん?」

死神「えーっと衣装代と小道具代で合計……って仮装ちゃうわ!このガキ!」

和馬「えらいノリええなこの妖怪。一緒に飲んだら妖怪メダルくれそうやなぁ。」

死神「誰が妖怪ウォッチやメダルなんかあげへんわ!」

和馬「ほんで……なんで妖怪が出てきたん? お盆の季節はもう終わったで?」

死神「妖怪もお盆もちゃうねん! 俺の名前は死神。」

和馬「死神……?」

死神「せや。『死ぬ』に『神』って書いて『死神』や。こう見えて東大出とるんじゃ。偉いんじゃ。」

和馬「得意科目なんや?」

死神「生きとった頃は英文科行っとったなぁ。」

和馬「ヘェー! ほならなんか英語喋ってくれへん?」

死神「いやぁ英語なんかペンパイナッポーくらいしか憶えてへんわ。」

和馬「お前ホンマに東大卒なん?」

死神「うっさい! 今はその話ちゃうやろがい! オドレらが俺の大事にしとる石像つぶしたことについてやろが!」

和馬「そういやそんな日もあったなぁ。」

死神「何とぼけとんねん現在形やろが。」

和馬「……どーしたら許してくれますかねぇ死神はん……?」

死神「アカン。これはちょっと許せへんわ。お前ら二人に100年後に死ぬ呪いかけたるわ!」

和馬「それだけは勘弁して下さい……! 代わりにコイツ! このアホでどうぞ! 彼はもう充分生きました!」

拓真「は~?」

死神「……ちょっと気の毒なってきたわ。」

拓真「なぁ和馬ぁ。何怯えとんの?」

死神「おーっとそうやった。まだコイツには俺の姿見えてへんかったなぁ。どれ。姿でも見したろか。」



(死神、拳で拓真の頬をおもっくそ殴りつける。

痛みで拓真の酔いが醒め、死神の姿が目に映る。)



拓真「痛ぇ……ん? ってうわああああああああああ!」

死神「どやぁ。ようやくお目にかかれたなぁクソガキ。」

拓真「ガタガタガタガタガタガタガタガタ。」

死神「俺は死神やぁ……怖いやろぉ。」

拓真「ガタガタガタガタガタガタガタガタ。」

死神「怯えろ怯えろぉ。もっと震えろコラァ!」

拓真「ッガータガタガタガタガタガタガタガタガタ。」

和馬「……なんか……『青鬼』のたけしみたいになっとる。」

拓真「ガタガタガタガタガタガタガタガタ……」

死神「いつまでガタガタしとんねん落ち着かんかい!」

拓真「ハッ……!? ここはどこや……!? 俺は誰や!?」

和馬「アカン拓真が記憶喪失なってもうた!」

死神「うわ~なんかすまんなぁ。悪気はないんや堪忍してぇ。」

拓真「ん……? なんで俺酒なんか持っとるんや……?」

和馬「うわガチめなやつやんけ。」

死神「え……? これ病院連れて行った方がええんとちゃう?これ少ないけど交通費としてつこうて……」

拓真「ッしゃあラッキー! 和馬ぁこれで海物語やろや~!」

死神「今の時間と金返せえ!」

拓真「自慢やないけど俺の記憶力はかの有名な厩戸皇子に匹敵するレベルやで……!」

和馬「うまやとの……なんて?」

死神「お前聖徳太子のことそっちで呼んどるんか教養深いなぁ。」

和馬「そんなことより息するように嘘ついたでコイツ」

拓真「オイ悪魔……! 俺を呪う言うたなぁ? 呪ってえぇんは呪われる覚悟のあるヤツだけやで!」

死神「あー理解したわ。」

和馬「もうコイツんことは煮るなり焼くなり二宮和也好きにしてください。」

拓真「またしても何も知らない二宮和也。」

死神「へぇ……ほんでな? だいぶ脱線してもうたけど、お前ら、金に困っとるらしいなぁ?」

拓真「えー?」

和馬「ど、どうしてそれを……?」

拓真「キャー盗撮よー!」

死神「せめて盗聴って言えや。」

和馬「俺等が金に困っとるって話……何か関係あるんでっか?」

死神「せや。お前らに、えぇ話があるんや。」

拓真「えぇ話だぁ?」

死神「お前らに、金稼げる仕事、教えたるわ。」

拓真「金稼げる仕事ぉ?」

死神「せや。まず連絡手段としてテレグラムっちゅうアプリ入れてくれや。」

和馬「いやそれ闇バイトの常套句やないか━━━━━い!」




◇(その三に続く。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

令和・死神 -なんか緊張感のない怖い話- 伏見翔流 @Fushimi_Syouri

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ