酔えよ

清明

第1話

「人は酔うと笑うか泣くかダル絡みをすると言う……君はどちらかな?」

「ダル絡みするタイプかお前」

「フフ……よく分かったな」

「分かりやす過ぎる」

「え、で、結局どっち?笑うの?泣くの?」

「別に……普段と変わらないけど」

「はーでたでた。私は酔いませんってか?はーつまらん」

「ダルッ……」

「もっと!本音を!話せよぉッ!」

「私はいつも本音を話している」

「お?」

「なのにお前はいっつも聞きはしない」

「……あれ、ちょっとまずい流れになってきている気がする」

「この前もそうだ」

「あ、これあれかな、説教するタイプかな?」

「聞け」

「はい」

「この前、懇親会があっただろ、プロジェクトの」

「ありました」

「私の席の周りにはつまらない人間しかいなくて」

「仮にも同じプロジェクトの人をそう言うのは良くないと思うんだけども」

「そう言う話は今聞きたくない」

「あー、説教してる最中に説教はされたくないってか」

「うるさいな、いいから黙って話を聞け……いや、ときどき合いの手は入れて」

「かまって欲しいんか」

「そう言う感じで頼む。えーっと、だからつまらなくて、あの時」

「一応社会人なんだからつまらなくても適当に話して乗り切れば良いでしょ」

「乗り切ったよ!あの時はさ!」

「テンション上がってきてるね」

「上がってない」

「おっとぉ?急に普段通りですーって顔してきた」

「普段通りだが?」

「明らかに違うと思うけどねぇ……?まぁいいや、続けて」

「何を」

「話をだよ。私に何か説教するつもりだったんだろ。忘れんな」

「……そうだった」

「あ、結構酔ってるなコイツ」

「聞け。だからあの時、つまらない話に辟易した私はトイレに立つフリしてそのままトイレに行ったわけだが」

「行ったんだ」

「戻ってきたら私の席はすでに有象無象に占拠されていて、それはそれでつまらない席に戻らずにすむから良かったんだけど、このままポツンと立ちっぱなしになるわけには行かないから私はどこか空いてる席を探す旅に出たわけだ」

「そうか、長い旅に出たんだね……」

「いや?周りを見渡したらお前の隣の席が空いてたから移動時間含めて20秒くらいの旅だった」

「短いねぇ」

「それで、お前の隣に座った社会人の私は一応社会人として最低限の挨拶をしようと思って社会人的に話しかけたわけだが」

「さっきから圧が強いねぇ」

「お前は、イェイと言って乾杯したっきり元のグループの輪に戻った」

「いや、まぁ……話の途中だったし」

「そこにポツンと残される私」

「罪悪感を煽ってくるねぇ」

「学生の頃から知っている私を放置して他人と話すお前」

「学生の時はそんな仲良くなかったじゃん……」

「……まぁ、それはそう」

「てか、同じ学校だって知ったのこの間の懇親会だったし」

「私はお前を知っていたが?」

「いや、言われればうっすら記憶にはあるんだよ、そういえばいたなーって」

「いたんだが?」

「圧が強い」

「つまらない人間の多い中、少しは見どころのあるお前に一生懸命話しかける私を無視して他人と話すお前」

「いや、無視はしてないでしょ、いくらか話はしたし」

「つまらない話をな」

「何の話をしたら満足するんだ君は」

「学生の時もそうだ」

「あれ、待って学生の時の話に続くのこれ」

「続く」

「え、待ってそんなに絡んだ事ない……はずだよね?学生の時」

「……」

「沈黙が怖い」

「やっぱり聞いてないんだ、私の話」

「あれこれやらかしたか私」

「……フフフッ」

「こわぁー。え、今日急に飲みに誘ってきたのって」

「……フフッ」

「懇親会の時私の隣に来たのももしかして」

「……フッ」

「あの、何の話を」

「グラス空いてるね、何飲む?」

「あ、えっとぉ……お水を」

「水で酔えるの?」

「いや、どちらかというと酔いを覚ましたく」

「なんで?」

「えー……あ、これもう覚悟決めよう」

「ハイボールでいい?」

「はい」

「じゃあ、私の話を聞いてね」

「はい」

それから、私の記憶は無い。

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酔えよ 清明 @kiyoaki2024

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