「いえね……冬が来ると、訳もなく悲しくなりません?」
とても好きな台詞だ。
落語か何か忘れたが、いつも喧嘩ばかりしている夫婦がいて、奥さんになぜそんな男と結婚したのか聞いたら、
「そりゃ……だって冬は寒いじゃないか」
と答えたとか。
こちらの台詞は曖昧に覚えているので確かではないが。
ともかく、冬は寒い。
そして悲しく、寂しい。
人肌恋しい季節と身を以て実感する。
今朝、バイクに乗った。
とても寒い。
風は冷たい。そもそもの気温が低い。
なぜ乗ったのか。
長らく乗らないとバッテリーが上がっちゃうから……。
よく行くダムまで行った。
この近辺のライダーなら大体みんな行くツーリングスポットだ。
休日ならバイクでいっぱいになる駐車場も、今日はまばら。
やはり寒いか。
でも、嫌いじゃないんだ。
この寒さというか、寂しさ。
ダムの近くにはちょっとした売店というか、道の駅的なやつがあって、
食事もとれるわけだけど、温かい蕎麦を食べた。
グローブ越しに伝わる冷気ですっかりガチガチになった手が解凍され、血が巡る。
生きてるなぁ、と思う。
帰り道、バイクに乗りながら人生について考えていた。
これからどうなるのか、どうするのか。
寒いと、なんか真面目になっちゃうよな。
今日も無事、事故なく怪我なく家に着いた。
生還祝いだ、酒を飲もう。
飲んだ。