概要
人は、呼ばれた名前になる。彼が僕を「渚」と呼んだ夜から
『今度の連休、二泊三日で旅行に行こう。その時は、女装をしてきてほしいんだ。出発の時から、帰ってきて別れるまで、ずっと』
二十九歳、男。送ってきたのは、前の職場で一緒だった一歳上の男友達――少し前に、熱烈なプロポーズをしてきた相手だ。
僕は条件を出す。時間を限定すること。主導権はこちらが握ること。これは流されるのではなく、「自分がどう変化するかを確かめる実験」なのだと言い聞かせて。
サロンで作られた鎧。千二百グラムのパッド。三十万円のワンピース。そして、彼が耳元で呼びつづけた「渚」という名前。
人は、呼ばれた名前になる。
演じているつもりだった。観察しているつもりだった。
八甲田の夜が明けるまでは。
※地の文の一人称が「僕」「私」「渚」と移り変わります。誤植ではなく、この物語の構造そのものです
二十九歳、男。送ってきたのは、前の職場で一緒だった一歳上の男友達――少し前に、熱烈なプロポーズをしてきた相手だ。
僕は条件を出す。時間を限定すること。主導権はこちらが握ること。これは流されるのではなく、「自分がどう変化するかを確かめる実験」なのだと言い聞かせて。
サロンで作られた鎧。千二百グラムのパッド。三十万円のワンピース。そして、彼が耳元で呼びつづけた「渚」という名前。
人は、呼ばれた名前になる。
演じているつもりだった。観察しているつもりだった。
八甲田の夜が明けるまでは。
※地の文の一人称が「僕」「私」「渚」と移り変わります。誤植ではなく、この物語の構造そのものです
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