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概要
月が、四万分の一だけ痩せた。ただそれだけで、地球は傾いた。
――この話は、公式には存在しない。
二〇三一年十一月十四日午前二時二十二分。
小笠原沖の測量船で、観測官・有働樹は潮位計の異常に気づいた。予測より十一センチ高い。津波でも高潮でもない、誰も騒がない数字だった。
同じ時刻、月面北東部が白熱した。ラグランジュ点に溜まった宇宙ゴミが、月を削り取ったのだ。
月は割れなかった。ただ、四万分の一だけ軽くなった。
それだけで、四十六億年安定していた地球の自転軸が、揺れ始めた。
極移動。海の傾き。そして、破局噴火の連鎖――
天体物理学者・神埼創は学界に笑われ、官僚・黒沢冬吾は地下施設の扉を開けない決断を下し、種子研究者・芹沢灯は五万三千八百点の種を捨てる。
太陽が消えた世界で、人類は八十三億から三十億を割り込んだ。
これは、英雄の物語ではない。
みっともな
二〇三一年十一月十四日午前二時二十二分。
小笠原沖の測量船で、観測官・有働樹は潮位計の異常に気づいた。予測より十一センチ高い。津波でも高潮でもない、誰も騒がない数字だった。
同じ時刻、月面北東部が白熱した。ラグランジュ点に溜まった宇宙ゴミが、月を削り取ったのだ。
月は割れなかった。ただ、四万分の一だけ軽くなった。
それだけで、四十六億年安定していた地球の自転軸が、揺れ始めた。
極移動。海の傾き。そして、破局噴火の連鎖――
天体物理学者・神埼創は学界に笑われ、官僚・黒沢冬吾は地下施設の扉を開けない決断を下し、種子研究者・芹沢灯は五万三千八百点の種を捨てる。
太陽が消えた世界で、人類は八十三億から三十億を割り込んだ。
これは、英雄の物語ではない。
みっともな
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