「記憶を売る本屋」と聞いて怖い話かと思ったら、忘れたい理由が人で全然違って、何度も胸が詰まりました。特に黄色いガーベラの夫婦と、母親との喧嘩を売りに来た薫がつながった瞬間はかなりきました。忘れることで楽になる人もいれば、忘れても誰かの中には残り続ける。店主まで自分の過去を売っているのも寂しいです。棚に並ぶ本が全部、誰かが手放した人生だと思うと、気軽に一冊抜けなくなります。私なら立ち読みも無理です。
忘れたい記憶を売りに来る客の話が続いて、最後にようやく売る側の顔が見えます。あの一行のためにこの構成だったのかと。伏線が回収される気持ちよさより、回収されたあとの後味のほうが長く残るタイプでした。読み終えてすぐ、前の話を見返しています。
その店は、要らなくなった記憶を買い取ってくれます。 それは、ある奥さんのものだったり、ある少年のものだったり……多種多様で、一話ごとに異なるお話が展開します。 時々、これ繋がっているのでは――と思わせられるものもあり、先の展開が気になる連作集です。【レビューコンテスト応募】
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