概要
わたくし、生まれて初めて走りました!
〈晴れ女〉と申します。
進水式に、棟上げに、船出に、契約の席に。十九年、二百三十一回、わたくしは座らされて微笑んで「本日は、よき日にございます」と申し上げてまいりました。走ったことはございません。転んで傷がつくと、縁起が悪いのだそうです。
そして本日、王国一の不運公爵と婚約いたします。
行く先で物が壊れ、人が転び、屋根が落ちる。婚約は三度流れ、わたくしが四人目。
顔合わせの乾杯の直後、天井飾りが落ちてまいりました。あの方がわたくしを抱えて避け、卓が傾き、床板が抜けて、二人そろって生垣へ。倒れた拍子に噴水が割れて、水柱が上がりました。
泥と葉と水をかぶって、わたくしは息を切らしておりました。
——生まれて初めて、走ったのです。
「……申し訳ない」
「いいえ。最高で
進水式に、棟上げに、船出に、契約の席に。十九年、二百三十一回、わたくしは座らされて微笑んで「本日は、よき日にございます」と申し上げてまいりました。走ったことはございません。転んで傷がつくと、縁起が悪いのだそうです。
そして本日、王国一の不運公爵と婚約いたします。
行く先で物が壊れ、人が転び、屋根が落ちる。婚約は三度流れ、わたくしが四人目。
顔合わせの乾杯の直後、天井飾りが落ちてまいりました。あの方がわたくしを抱えて避け、卓が傾き、床板が抜けて、二人そろって生垣へ。倒れた拍子に噴水が割れて、水柱が上がりました。
泥と葉と水をかぶって、わたくしは息を切らしておりました。
——生まれて初めて、走ったのです。
「……申し訳ない」
「いいえ。最高で
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