「人に幸せを与えられなかったとき、自分は幸せになれるのか」という一つの問いを、飾らない一人称の語りで丹念に掘り下げていく作品です。カナブンの死や幼稚園時代の接吻の記憶といった具体的なイメージが、抽象的な自問自答に生々しい手触りを与えています。けして結論を急がず、矛盾や卑怯さも隠さずに書き留めていく誠実さが好印象で、まるで著者の思考ノートを覗き見しているような没入感があります。会話や事件の展開はなく、独白のみで進むため好みは分かれそうですが、思春期的な自意識と向き合いたい読者には刺さる一編だと思います。
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