概要
夫の田辺亮介が末期腎不全と診断された日
夫の田辺亮介が末期腎不全と診断された日、私たちの生活は崖っぷちに突き落とされたようだった。
医師によると、亮介の腎機能はかなり低下していて、尿毒症の症状がいつ悪化してもおかしくないという。亮介は私の手を握りしめ、目を赤くしていた。
「美夏、俺、死にたくない」
透析には健康保険や高額療養費制度があるから負担はある程度抑えられる。けれど、入院中の差額ベッド代、通院の交通費、生活費、それに亮介がどこかで聞いてきた自由診療の検査や治療には、どうしてもまとまったお金が必要だった。
そのお金を作るため、私は昼間は渋谷の高級食品スーパーでレジに入り、夜は港区白金台の近くにある宿泊型産後ケア施設で夜勤の補助スタッフとして働いた。