概要
飯は冷たかった。
昭和二十三年十一月。台東区の刑事・猿渡冬二は、山谷の路地で身元不明の男の死体を発見する。処理して、台帳に書く。それだけのはずだった。
三日後、同じ男が同じ場所で死んでいた。
冬二は記入ミスとして処理した。
七度目も、九度目も、十三度目も、記入ミスとして処理した。
フィリピンで戦った復員兵である冬二には、右腕に破片が残っている。雨の日だけ疼く。殺した男の名前は知らない。聞かなかった。聞けなかった。
十五度目のある朝、死体が口を開いた。
「あんた、俺の名前知ってるか」
「知らん」
「そうか」
間があった。
「俺も忘れた」
戦後東京、山谷の路地を舞台にした、罪と反復と恩寵の物語。
三日後、同じ男が同じ場所で死んでいた。
冬二は記入ミスとして処理した。
七度目も、九度目も、十三度目も、記入ミスとして処理した。
フィリピンで戦った復員兵である冬二には、右腕に破片が残っている。雨の日だけ疼く。殺した男の名前は知らない。聞かなかった。聞けなかった。
十五度目のある朝、死体が口を開いた。
「あんた、俺の名前知ってるか」
「知らん」
「そうか」
間があった。
「俺も忘れた」
戦後東京、山谷の路地を舞台にした、罪と反復と恩寵の物語。