雨の降りやまない森から始まる冒頭は、静かなのにどこか胸が騒ぎます。舞台は精神科の診察室。予約もなく現れた少女が「消されるんです」と告げるところから、物語は少しずつ形を変えていきます。患者の痛みに寄り添う医師でありながら、自分の心の輪郭だけがつかめない。その危うさが、湿った空気の描写とともにゆっくり伝わってきました。誰にも見えない心を扱う仕事の重さが、行間からじんわり滲んできます。感情を痛みと読ませる言葉選びも印象的で、続きが気になる一作です。
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