くたばっちゃえ〜はじめての復讐〜

或覇(αβーアルファベーター)

たろくん、はじめての復讐


「たろくん、みてみて!今日もシロツメクサがとってもきれいに咲いたのよ!」


 パステルピンクの髪をふわふわと揺らしながら、エルシア姉さんは満面の笑みを浮かべました。彼女の着ている賢者様のお洋服は、すそが少しほつれていて、あちこちに泥がついています。


 それでも、エルシア姉さんの笑顔は太陽みたいにキラキラしていました。


「うん!エルシア姉さん、すっごくかわいい!お花もお歌をうたってるみたいだね!」


 ぼく――たろくんは、エルシア姉さんの手をぎゅっと握りしめて、いっしょにぴょんぴょんと跳ねました。


 ここは、世界でいちばん優しくて、いちばんお上品な国『グレース・ランド』。


 お空はいつでもいちごミルクみたいな薄いピンク色で、マシュマロみたいな雲がふわふわと流れています。街の建物はぜんぶお砂糖細工みたいに白くて、歩くたびにどこからか甘いオルゴールの音が聞こえてくる、とっても素敵なお国です。


 でもね、このお国には、たったひとつだけ「ざんねんなルール」がありました。


 それは、お役に立てないゴミくずさんは、お星さまにならなきゃいけないということ。


 エルシア姉さんは、このお国でいちばん偉い「大賢者」さまでした。悪い病気を治すお薬を作ったり、みんなが幸せになる魔法を考えたりする、とっても頭が良くて優しいお姉さんです。


 だけど最近、エルシア姉さんは「魔法の力が足りなくなっちゃった」みたいなんです。お外の悪い魔獣をやっつけるお仕事が、ちょっぴり上手にできなくなっちゃいました。


 だから、お国のみんなは、エルシア姉さんに「お星さまになってね」って言うようになりました。


「ねえ、エルシア。今日の『おうじょさまのお茶会』、あなたのお席はないの。だって、魔族との戦いでもう魔法が使えないゴミくずなんですもの。ウフフ、かわいそう」


 ピンク色のフリルをたくさんつけた、可愛いお洋服の女の子たちが、エルシア姉さんを囲んでクスクスと笑っています。女の子たちの手には、トゲトゲのついた可愛いピンク色の鞭が握られていました。


「あ、あのね……ごめんなさい。でも、私、みんなのために新しいお薬を……」


バちんッ!


 なんだか激しいおとがして、エルシア姉さんの白いお肌に、まっかな線が走りました。


 ぽたぽた、と、床にまっかなお汁がこぼれます。シロツメクサの葉っぱが、泥の中に落ちてぐしゃりと潰れてしまいました。


「きゃはは!見て、こいつの血って、私たちと同じ赤色なんだ!なんか嫌!」


「早くお星さまになっちゃえばいいのに!」


 女の子たちはキャッキャと楽しそうに笑いながら、エルシア姉さんを何度も何度も叩きました。エルシア姉さんは痛いお顔を隠すように丸くなって、しくしくと泣いています。


 ぼくは、お物陰からそれをじっと見ていました。胸の奥が、なんだか「ぽかぽか」としてきました。


(そっかあ……)


ぼくは、おててをぽんと叩きました。


(あの可愛いお姉ちゃんたちは、エルシア姉さんと『なかよしさん』になりたいんだね。だから、あんなに一生懸命にお手入れをしてあげてるんだ。でも、やり方がちょっとだけ、下手くそなのかな?)


 ぼくは、とっても、とっても優しい男の子です。


 エルシア姉さんが大好きだから、エルシア姉さんを困らせる人たちには、もっと「じょうずなお手入れ」を教えてあげなきゃいけません。


「くたばっちゃえ〜♪」


 ぼくは、お口の中でちいさく、可愛くお歌をうたいはじめます。これが、ぼくの「はじめての復讐」の始まりでした。



◇◆◇


 お日様が沈んで、お空がチョコレート色に染まる頃。


 お昼にエルシア姉さんを叩いていた可愛い女の子――マロウちゃんは、お城の裏庭で、お気に入りのピンクの鞭をお水で洗っていました。


「おのれゴミくず賢者、私の可愛い鞭を汚しちゃって……」


 ぷんぷんと怒っているマロウちゃんのうしろから、ぼくは足音を立てずに、すうっと近づきました。


「マロウちゃん、こんばんは!」


「ひゃんっ!? ……な、なによ、ただの『たろくん』じゃない。びっくりさせないでよ、このちび」


 マロウちゃんは、ぼくをキロリとにらみつけました。でも、ぼくはぜんぜん怖くありません。だって、ぼくはマロウちゃんのために、とっても良いことをしにきたんですから。


「ねえねえ、マロウちゃん。お昼間の、すっごく上手だったよ!でもね、あの鞭だと、エルシア姉さんのお肌が汚れちゃうでしょ? ぼく、もっとお肌が『きれい』になる、特別なお裁縫を知ってるんだ!」


「はあ?お裁縫?何言ってるのよ、バカみたい」


 マロウちゃんがフンと鼻を鳴らした瞬間、ぼくはポケットから、お裁縫箱を取り出しました。


 中に入っているのは、お星さまの形をした可愛いピン留めと――とっても太くて、ギザギザのついた「お肉用のお針」と、キラキラ光る「銀色の針金」です。


「な、何それ……ちょっと、近づかないで……」


「マロウちゃんのおてて、いつも鞭を振ってて疲れちゃうでしょ? だからね、もう持たなくていいように、おててと鞭を『いっしょ』にしてあげるね!」


「え? キャああっ――!?」


 マロウちゃんが叫ぼうとしたので、ぼくは親切に、彼女のお口に大きなイチゴ(お庭に生えてた、とっても硬い石ころみたいなイチゴです)をぎゅむっ!と詰め込んであげました。お口がふさがって、マロウちゃんは「むー!むー!」と可愛い声を出すことしかできなくなりました。


「さあ、お裁縫の時間だよ〜♪」


 ぼくはマロウちゃんの右手を無理やり広げて、お気に入りのピンクの鞭の持ち手を、手のひらにペタッと合わせました。


 そして、ギザギザのお針さんに銀色の針金を通し、マロウちゃんの手の甲から、ぐさ、ぐさ、と刺していきました。


 メリメリ、プツッ、と、お肉がちぎれる良い音がします。


「むうううーーーっ!!むーーーっ!!」


 マロウちゃんのお目目が、こぼれそうなくらい大きく開いて、涙がいっぱい溢れてきました。痛いのかな? ううん、きっと、ぼくの優しさに感動しているんだと思います。


「ほらほら、動いちゃだめだよ。お針が曲がっちゃうからね。お肉とお肉を、こうして、ぎゅーって縫い合わせて……よし、次は皮のお洋服をめくって、鞭の芯を骨にカチッと結びつけちゃおう!」


 ぼくは、お肉をハサミでチョキチョキと綺麗にひらいて、白い骨をだしました。そこに、鞭の根元をワイヤーでぐるぐる巻きにして、カチッと固定しました。


「わあ、すごーい! これでマロウちゃんのおてては、一生、大好きな鞭とお友達だね!」


 仕上げに、お肉をパタンと閉じて、可愛いピンク色のリボンで結んであげました。マロウちゃんの手からは、イチゴジャムみたいなまっかなお汁がドバドバと溢れて、彼女のフリフリのドレスを真っ赤に染めていきます。


「うふふ、白いドレスより、こっちの方がずーっとおしゃれだよ!あ、そうだ。お耳にも、可愛い飾りをつけてあげるね」


 ぼくは、マロウちゃんがエルシア姉さんの悪口をいっぱい言っていたのを思い出しました。


 悪いことを言うお耳は、もっと可愛くしてあげなきゃ。ぼくはハサミで、マロウちゃんの小さくて可愛いお耳を、チョキン、チョキンと、お花の形(桜の花びらみたいに5つに裂く感じです)に切り開いてあげました。


「できたぁ! 『お耳のお花』さんだよ! 綺麗だね、マロウちゃん!」


 マロウちゃんは、もう声も出せないみたいで、おめ目を白黒させて白目をむきながら、地面にバタンと倒れてしまいました。ピクピクと足が動いているのは、嬉しくてダンスをしているのかな?


「エルシア姉さん、喜んでくれるといいな。マロウちゃん、明日もお茶会、いっしょに遊ぼうね!」


 ぼくはマロウちゃんのお顔に、可愛いシロツメクサを一本添えて、スキップをしながらお家に帰りました。



◇◆◇


次の日の朝。


 お城の広場は、朝から大騒ぎになっていました。


「ひ、悲惨だ……!マロウ嬢が、変わり果てた姿に……!」


「なんておぞましい魔獣の仕業だ! 手が鞭と一体化して、耳が花みたいに裂けているなんて……!」


 きらきらの鎧を着た、お上品な騎士の『ルミナス』様が、剣を抜いて怒っていました。


 ルミナス様は、この国で一番強い騎士さまで、とってもお顔が綺麗です。でも、エルシア姉さんのことが大嫌いでした。


「おい、ゴミくず賢者!これはお前の仕業か!? お前が魔王の呪いでも使って、マロウ嬢をこんな目に遭わせたんだろう!」


 ルミナス様は、広場にいたエルシア姉さんの胸ぐらをグイッと掴み上げました。


「ち、違います……! 私は何も……っ」


「うるさい!お前のような役に立たないゴミは、生かしておくだけで不浄だ!今日こそ、その汚い手足を切り落として、家畜の餌にしてくれる!」


 ルミナス様は、キラキラ光る大剣を振り上げました。


 お国のみんなは、「そうだそうだ!」「やっちゃえ!」と、おててを叩いて大喜びしています。みんな、とっても笑顔です。ディストピアのお国のみんなは、誰かがお星さまになるのが大好きなんです。


(あ、危ない……!)


 だけどぼくは、エルシア姉さんが傷つくのは絶対に嫌でした。


 だから、お衣裳の袖に隠していた「お友達のはっちー(大きな針を持った、とっても可愛いハチさん)」を、ルミナス様の首すじに向けて、ぷいっと飛ばしました。


チクッ。


「ん!?……虫?」


「おい、ゴミくず賢者、今日のところは免じてやるが、次は絶対に――うぐっ!?」


 ルミナス様が突然、お喉をかきむしりながら、その場にドスンと倒れ込みました。


 ぼくのすず蜂さんの毒は、お体がぜんぶ「お餅」みたいに柔らかくなっちゃう、特製の毒なんです。


「う、動かん……手足が、ふにゃふにゃに……」


「ルミナス様!? どうされたのですか!?」


 周りの人たちが慌てている隙に、ぼくはエルシア姉さんの手を引っ張って、お物陰に隠れました。


「たろくん……ありがとう。でも、ここまでしなくても、ルミナス様が……」


「大丈夫だよ、エルシア姉さん! ルミナス様は、ちょっとお疲れなんだよ。ぼくが、お体を『ほぐして』あげて、もっと強くなれるようにお手伝いしてくるね!」


「え、ええ……?気をつけてね、たろくん……」


 エルシア姉さんは、本当にお心が優しいので、ぼくの言葉をそっくりそのまま信じてくれました。


 ぼくはエルシア姉さんに「いい子いい子」をしてもらって、胸がキュンとしました。


(よし、ルミナス様を、もっとお上品にしてあげよう!)


その日の夜。


 お城の地下の調練場に、お体がふにゃふにゃになって転がっていたルミナス様の前に、ぼくは笑顔で現れました。


「こんばんは、ルミナス様!」


「お、お前は……あの糞女にいつも集ってる小汚いガキ……!何をしにきた……!」


 ルミナス様は、お口だけは元気に動かせるみたいです。お上品なお顔が、怒りで真っ赤になっています。


「ルミナス様は、騎士さまだから、お体が硬いと上手に剣が振れないでしょ?だからね、ぼくがお体を『もっと柔らかく』、お肉をすり鉢でこねこねしてあげるね!」


 ぼくが取り出したのは、お城の厨房から借りてきた、おっきなおっきな「お肉用のみじん切りマシーン」です。


「な、何を考えている……!?やめろ、来るな!私は高貴な騎士だぞ――」


「まずは、お上品な足の指さんからね♪」


 ぼくはルミナス様の右足を、みじん切りマシーンの穴に、すぽっと入れました。


 そして、ハンドルを、ぐるぐる、ぐるぐる、と楽しく回しました。


 ガリガリガリッ! ベキベキッ、グチャァ……。


「ぎゃああああああああああーーっ!?!?痛い!痛い痛い痛い!!足が、私の足があああっ!!」


 マシーンの出口から、綺麗にすり潰された、まっかなお肉のイチゴジャムが、とろとろとお皿に落ちていきます。


「わあ、すっごく綺麗なお色!ルミナス様、お体がとっても柔らかくなっていくよ!」


「ひぃ、あ、あああ……頼む、やめてくれ! 悪かった!あの賢者にも、もう二度と逆らわない!だから、それ以上回すなァ!」


 ルミナス様は、お目目から涙とよだれをドバドバ流して、お上品なお顔をぐしゃぐしゃに歪めて泣き叫びました。


 でも、ぼくは知っています。ここで止めたら、ルミナス様のお体が中途半端に硬いままになっちゃいます。それは、ルミナス様のためになりません。


「ダメだよ、最後までちゃんとお手入れしなきゃ!次は、お膝さんだよ!」


ぐるぐる、ぐるぐる。


ガリガリ、バキバキ、ジュブジュブ。


「あああああ!あああーーーっ!!」


 ルミナス様の右足が、太ももまでぜんぶ、綺麗なミンチになっちゃいました。


 でも、これだけだと左右のバランスが悪いですよね。だから、左足も、ぐるぐる。


「ーーーっ!!」


 両足がぜんぶ綺麗な赤色のお肉のペーストになったところで、ぼくはルミナス様のお体を優しく撫でてあげました。


「ほら、見てみて!足がぜんぶなくなって、お芋虫さんみたいに可愛くなったよ!これなら、もう歩いてエルシア姉さんをいじめに行くこともできないね。とっても安心!」


「あ……あ……」


 ルミナス様は、ショックのあまり、お口をパクパクさせることしかできなくなっちゃいました。ぼくは、お皿に溜まったルミナス様のお肉のミンチをスプーンですくって、ルミナス様のお口に、あーん、と入れてあげました。


「はい、お体に必要な栄養だよ。お上品な味がする?」


 ルミナス様は、おめ目を白くして、ごくん、と自分のお肉を飲み込むと、そのまま静かに気絶してしまいました。


「うふふ、騎士様もお手入れ完了!ぼくって、とってもお仕事が上手だなぁ」


 ぼくは、おててについたまっかなお汁を、可愛いハンカチで綺麗に拭き取りました。


────────────────────

 ──────────────────


数日後。


 お国のお偉いさんたちは、マロウちゃんとルミナス様が「男の子(ぼく)」に襲われてお人形みたいになっちゃったので、とってもおこりんぼうになっていました。


「すべては、あのゴミくず賢者エルシアの不徳が原因だ!」


「彼女がいるから、この国に災いが降り注ぐのだ!」


 お城の玉座で、一番偉い『キング・グランデ』様が、大きな声を張り上げました。


 キング・グランデ様は、お腹がまんまるで、お砂糖のお菓子をいっぱいたべる、とっても太った王様です。


「本日をもって、エルシアを【星成(ほしなり)の儀式】に処す! あの女の体を大砲でバラバラにして、空に花火として打ち上げるのだ!」



「わあーい!花火だ花火だ!」


「ゴミくず賢者の花火、きっときれいなお色だね!」


 お国の人たちは、広場に集まって、おててを叩いて大喜び。広場の真ん中には、ピンク色の可愛いリボンで飾られた、おっきな大砲が置かれていました。


 その中に、エルシア姉さんが、手足を縛られて入れられようとしています。


「いや……いやです!私、まだみんなのために……っ」


 エルシア姉さんは、大粒の涙を流して拒んでいました。ぼくは、それを見て、胸がとっても、とっても苦しくなりました。


(どうして、みんなエルシア姉さんの優しさがわからないのかなぁ……。エルシア姉さんは、お空に打ち上げられたら、お寒くてかわいそうだよ。お星さまにならなきゃいけないのは、エルシア姉さんじゃなくて……)


 ぼくは、きらきらとしたお目目で、玉座に座っているキング・グランデ様と、周りでおててを叩いているお国の人たちを見つめました。


(そうだ。みんなをお星さまにしてあげれば、お空がとっても賑やかになって、みんな幸せになれるんだ!)


 ぼくは、皆の役に立ちたいですから、みんなの願いを叶えてあげることにしました。


「キング・グランデ様、お手をどうぞ!」


 ぼくは、お城の兵隊さんの格好をして、キング・グランデ様の前に進み出ました。おててには、とっても美味しそうな「特製のお砂糖のケーキ」を持っています。


「む?見ない顔だ。なんだその美味そうな菓子は。お星さまの儀式の前に、私が食べてやろう」


 キング・グランデ様は、よくばりさんなので、ぼくのケーキを一口でパクッと食べちゃいました。


「むぐむぐ……美味い!だが、なんだか体が熱く――」


ドクン!


 キング・グランデ様のお腹が、突然、スイカみたいに大きく膨らみました。


 ぼくの作ったケーキにはね、お水を入れると1万倍に膨らむ「スポンジ種」が入っていたんです。


「ぶ、ぶほっ!?腹が……腹が張り裂けるーーーっ!!」


「キング様、お腹がポンポコリンだね!もっと可愛くしてあげる!」


 ぼくはポケットから、おっきな「お祝い用のクラッカー」を取り出しました。でも、中に入っているのはヒモじゃなくて、キング様のおへそに突き刺すための「可愛いストロー」です。


 ぼくはストローを、キング様のおへそに、すぽんっ!と深く突き刺しました。


「ひぎゃあああああああーーーっ!!」


「さあ、お空のパレードの始まりだよ〜♪」


 ストローから、キング様の中身が、プシューーーッ!!と勢いよく噴き出しました。


 それはまるで、お祝いのシャンパンファイトみたいに、お空に高く舞い上がります。


「うわあ! きれい! キング様のお汁、とってもきれいなお色だよ!」


 広場にいたお国の人たちは、お空から降ってきたまっかなお汁を浴びて、最初は「きゃあきゃあ」と喜んでいましたが、それがキング様の中身だと気づくと、お顔を真っ青にして逃げ惑い始めました。


「ひ、!?王様が、王様が破裂したぞ!!」


「化け物だ! あのガキは化け物だ!!」


「みんな、どこに行くの?お星さまの儀式は、これからだよ?」


 ぼくは、にっこりと微笑んで、大砲の向きを、逃げるお国の人たちのほうへ、くるりと変えました。そして、大砲の中に、キング様の残ったお体をぎゅうぎゅうに詰め込みました。


「それ、発射ーーー!」


ドーーーッ!!


 大砲から放たれたキング様のお肉の塊が、逃げ惑う人たちの上にドスンと落ちて、何人もの人が床に押し潰されて、ペッちゃんこの「お煎餅」になっちゃいました。


「きゃははは!お星さまのパレード、すっごく楽しいね!」


 ぼくは次から次へと、腰が抜けて動けないお国の人たちを、大砲の中にぎゅうぎゅうに詰め込んでいきました。


「た、助けてくれ!悪かった!ゴミくずなんて言ってごめんなさい!」


「お星さまになりたくない、お星さまになりたくないぃぃ!」


「ええ? だってお星さまになりたいって、さっきみんなでおてて叩いてたじゃない。嘘つきさんは、おめ目をくり抜いちゃうぞ?」


 ぼくは親切に、嘘をついたおじさんのおめ目を、スプーンでコロン、コロン、とくり抜いて、大砲の弾の代わりにしました。


ドーン! ドーン!


 お空には、まっかなお肉の花火が、何度も何度も綺麗に咲き誇りました。


 いちごミルク色だったお空は、いまや一面、ドロドロとした暗い赤色に染まり、お城は、みんなのお汁で、ドロドロに溶けて崩れていきました。


「……たろくん?」


 大砲のうしろで、縄を解かれたエルシア姉さんが、ぽつんと座っていました。


 彼女の綺麗なお洋服は、お空から降ってきたみんなのお汁で、すっかり真っ赤に染まっています。


周りには、もう誰もいません。


 お行儀の悪かったお国の人たちは、ぜんぶお空に打ち上げられて、綺麗なお星さま(お肉の破片)になっちゃいましたから。


 ぼくは、おててについたお肉のクズをパッパッと払って、エルシア姉さんのもとに駆け寄りました。そして、エルシア姉さんの胸に、ぎゅーっと飛び込みました。


「エルシア姉さん!もう大丈夫だよ!いじわるな人たちは、みんな、お空でなかよくお星さまになったよ!ぼく、エルシア姉さんのために、がんばったんだ!」


 エルシア姉さんは、真っ赤に染まった街と、ぼくのまっかなおててを、交互に見つめました。お目目には、ぽろぽろと涙がたまっています。


「たろくん……あなたが、みんなを……?」


「うん!ぼく、エルシア姉さんが大好きだから!みんなにお星さまのやり方を、優しく教えてあげたの。ぼく、いい子でしょ?」


 ぼくは、褒めてほしくて、エルシア姉さんのお顔をじっと見上げました。


「嫌嫌嫌嫌嫌……いや、や……やった!」


 エルシア姉さんは、少しだけお体を震わせていましたが……やがて、とっても、とっても優しい笑顔を浮かべました。


 そして、ぼくのちいさな頭を、優しくなでなでしてくれました。 


「……そうね。たろくんは、とっても優しい、いい子ね。私のために、こんなに頑張ってくれたんだものね……」


「うん! エルシア姉さん!」


 エルシア姉さんは、この狂ってしまったお国で、ずーっといじめられてきたから、お心がちょっぴり壊れちゃっていたのかもしれません。でも、ぼくの「善意」を、ちゃんと受け止めてくれたんです。


「ねえ、たろくん。これからは、二人きりね」


「うん!ふたりで、もっともっと、綺麗なお花畑を作ろうね!」


 崩れ落ちたお城の真ん中で、ぼくとエルシア姉さんは、ぎゅっとおててを繋ぎました。


 足元には、みんなのお汁をいっぱいに吸って、見たこともないくらい大きくて、まっかなお花が、一面に咲き誇っています。


 お空からは、まだポタポタと、お星さまたちのまっかな涙が降ってきていました。


「くたばっちゃえ〜♪」


 ぼくはエルシア姉さんといっしょに、可愛い声でお歌をうたいながら、ふたりだけの新しいお国を歩き始めるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

くたばっちゃえ〜はじめての復讐〜 或覇(αβーアルファベーター) @alphado

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ