概要
名前を知らなければ、傷つかない。そう信じていた。
ホテルの名前は覚えていない。
名前を訊こうとしたら、女が遮った。「言わなくていい」
鎖骨に古い傷のある女と、一夜を過ごした。
枕の下に、片方だけのピアスが落ちていた。
捨てればいいのに、内ポケットにしまった。
匿名のまま消えるはずだった。消えてくれれば、よかった。
けれど指は、内ポケットの輪の硬さを覚えていた。
——名前を知った代わりに、何を失ったのか。
中年男の、終わらない一夜と、その後の沈黙の物語。
名前を訊こうとしたら、女が遮った。「言わなくていい」
鎖骨に古い傷のある女と、一夜を過ごした。
枕の下に、片方だけのピアスが落ちていた。
捨てればいいのに、内ポケットにしまった。
匿名のまま消えるはずだった。消えてくれれば、よかった。
けれど指は、内ポケットの輪の硬さを覚えていた。
——名前を知った代わりに、何を失ったのか。
中年男の、終わらない一夜と、その後の沈黙の物語。
読んでくれてありがとう。物語が届いて嬉しいです。これからも紡ぎ続けます。応援、ありがとう