概要
五月の朝、泉方橋。彼は一人の少女が欄干を越える瞬間を目撃する。
次の瞬間——少女も、彼女の痕跡も、すべて消えた。
翌日、彼女は何事もなく学校に現れた。
時間を止めることができると名乗る彼女の名前は、緒山朋奈。
明るくて優しい。だけど、久希だけは気づいてしまう。
彼女の感情タグだけが、いつも壊れていること。
彼女が、時々、泣いていること。
そして、彼女がこの世界から「消えよう」としていること——
異能力を持つのは、彼女だけじゃない。
存在が薄れゆく後輩・立花美里は、服を着替えるたびに「誰かに見えなくなる」。
完璧を求める会長・春野陽明は、危険を避けるたびに、その代償を仲間に押し付ける。
妹のために自
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!見える力の先にある、『見えないまま手を伸ばす』優しさ
人の感情が種類や数値の「タグ」として見える――。
一見すると便利そうな異能力ですが、この作品ではその力が、決して万能なものとして描かれていません。むしろ、『恐慌』や『得意』といったノイズが容赦なくこめかみを刺し、見えすぎるからこそ傷つき、信じられなくなり、誰かの善意さえ怖くなってしまう。主人公・石原久希の抱える孤独と息苦しさがとても丁寧に描かれていて、読み始めてすぐに心を掴まれました。
そんな久希の前に現れる緒山朋奈の存在が、とにかく魅力的です。明るくて、少しお茶目で、周囲を自然に笑わせる子なのに、彼女の感情タグだけはいつも文字化けして点滅し、うまく読めない。その違和感が物語を引っ張る大…続きを読む - ★★★ Excellent!!!相手のことがわかりすぎるツラさと、その先にある希望
相手の感情がタグとして見えるという特殊能力。
主人公が持つ魅力的な力は、その反面、本音や苦しみまで見えてしまうため、物語にさらなる深みをもたらしています。
登場人物は誰もが能力と引き換えに代償を抱えており、その孤独や苦しみを扱う物語は、人が抱く心の傷や願いにも焦点を当てていきます。
主役以外のキャラクターたちが徐々に輝いていくのも本作の特徴です。
心の痛みを描くのは簡単なことではありませんが、特殊能力というフィルターを通じて果敢に挑戦する作者様の姿勢に感服しました。
言いたいことをうまく言葉にできない葛藤や、「ありがとう」という言葉の重み。
なによりも前向きさやひたむきさが感…続きを読む - ★★★ Excellent!!!見える感情と見えない心が交差する、青春異能力もの
この作品は、人の感情が見えてしまう少年と、なぜか感情が読めない少女の出会いを描いた、青春異能力ものだと思います。
主人公の石原は、他人の感情がタグのように見える能力を持っています。しかし、それは便利な力というより、人との距離をうまく取れなくなる原因にもなっていて、彼が周囲から少し距離を置いている理由にも説得力がありました。
特に印象的だったのは、緒山が橋から飛び込み、石原が反射的に助けに向かう場面です。緒山の行動はかなり無茶ですが、石原の中にたまっていた過去の痛みや恐怖を、強引にでも別の方向へ向けようとしているようにも見えました。
単なる異能力の謎解きではなく、見えすぎることで傷ついた…続きを読む