第17話 時止めのカラクリ 壱
異界と現世の狭間、そこに『
店主曰く、「異界にあるから異界堂」らしい。
そんな骨董店には色々な骨董が持ち込まれる。
中でも神造品という神の創り出した品は現代科学が幾ら発展しても作ることは出来ないであろうアーティファクトと呼べる品であった。
そんな品の一つ、『時戻し』という銘を持つ懐中時計がある。
その懐中時計の周りには同じように時を刻む道具が幾つも置かれている。
その一つ、
「ストップウォッチ?」
「うふふふふふ」
店には今日も客が訪れていた。
その客何処にでも居そうな青年であった。
店主の玉藻様を見てポッと頬を染めるだけという初心さ。
しかし、骨董品に目をキラキラさせて頬を染めつつも玉藻様に「見せてください!」と言って来るあたり、骨董に対してある程度の嗜みもあり、興味本位以上の何かを持っているのが伺えた。
そんな彼が目を止めたのは時を刻む道具類が並ぶ一角であった。
この店に置いている品といえば、ブランド品の類ではない。
いわくの付く品々で、怪しい光の様なものを放ちながらも見た目はキラキラと輝いているだけだ。
感じる者であれば何か感じるのかもしれない。
その怪しい光は見る者を一部魅了するようで、そこに引き付けられる者も多い。
それはまるで誘蛾灯のように・・・
今も一人の者が引き寄せられてそれに見入っている。
そして、青年はあるストップウォッチを見て囁く。
そのストップウォッチはデジタルの品ではなく、アナログの秒針が回るタイプの品である。
青年は初めて見るタイプの物だったらしく、物珍し思想に見ている。
その横に接客で着いた玉藻様は興味深げに笑いながらそれを見ているだけだ。
「あの・・・」
「何で御座いましょう?」
「これ・・・手に取っても大丈夫ですか?」
「良いですよ~」
「あ、ありがとうございます!!」
青年は玉藻様に確認を取り、玉藻様はひょいとそれを取り、青年に渡す。
青年は恭しくそれを受け取り、手に取って眺めまわす。
「綺麗ですね」
「そうですね」
「あの」
「何で御座いましょう」
「これも売り物ですよね?」
「まぁそうですね」
青年は考える。
一部アングラサイトでこの店の情報は実しやかに囁かれていた。
やれ「異界の骨董店」だとか、やれ「そこに売っている物はただの骨董ではない」とか、中には「神の造ったアーティファクトや妖怪の持ち物などが売っている」等々の情報が散見された。
興味は行き付けの骨董店の親父からの世間話で出て来たことにある。
「いわく付きの品ばかりおぴているが銘品揃いだぞ」
「銘品ですか?」
「この世では絶対目に出来ない品と言えば解るか?」
「それは・・・」
青年はそれを聞いて俄然やる気が出て探した。
しかし、中々に見つからない。
半ば諦めており、探すのを止めていたのに青年はこの異界に行き着いた。
店を見つけた時、もしやと思い覗いてみれば、絶世の美女店長がお出迎えである。
噂通りであった。
アングラサイトにはこうも書かれていた。
『ここの骨董は危険だから見るだけに止めるのが吉』
確かにどれも必見の価値ある品々だと思う。
更にサイトにはこうも書かれていた。
『気に入る品があっても買うと危険。買ってしまった場合は店主に話をよく聞いておけ。品によっては使ったら人生詰む物あるぞ』
まさかそんな事は無いだろうとか青年は思っていた。
如何にも怪しい情報である。
確かに骨董の世界にはいわく付きの品がある。
だが、言っても不幸になるとかそう言う類の物だ。
来歴が不幸な出来事が多いことから縁起が悪いとかそう言う類の物だ。
正直その類だろうと思っていた。
しかし、品を見て思った。
確かに危険な雰囲気がある。
しかし、青年に手にしたストップウォッチを諦める選択肢は無い。
どうしてもこれが欲しいという欲求が抑えられないのだ。
「これを僕が買ったとして何か不都合がありますか?」
「そうですね~・・・そのカラクリは時を止めることが出来るんですが」
「はぁ?・・・今、時を止めることが出来ると言いました?」
「はい、申しましたよ~」
「そ、そうですか・・・それで」
「はい、時を止める際に代償を払う必要があります」
「代償ですか?」
「代償というより、報酬?エネルギー?まぁそのカラクリが欲するのです」
「欲する?」
「はい、ただ働きはしないみたいですよ~」
青年はそれが震えたように感じたが、よくよく注意して確認すれば、自分自身が震えている事に気が付く。
「あの・・・」
「何で御座いましょう」
「僕の場合は何を求められますか?」
「そうですね・・・時でしょうね」
「時とは?」
「はい、そのままの意味です」
「時間ですか?」
青年に頷いて答える玉藻様。
青年は膝が笑う程に震えている事に気が付く。
言い知れぬ不安。
買うのを止めろという声が己の内で聞こえた様な気がした。
しかし、ストップウォッチを見やれば、欲しいという欲望が顔を覗かせる。
青年は買うか買わぬかの選択に迷う。
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