第15話 正義の秤 参

白人男は黄金の天秤の下がった方に色々な物を載せてみる。

先ずは手元にあるボールペン。

特に変化はない。

変化というか何と言うか、ボールペンが乗せた瞬間に消えた。


「消えた!トラメンデス素晴らしい!!」


しかし、書く物は必要だと考えた瞬間、目の前にボールペンが現れた。


「現れたぞ!トラメンデス素晴らしい!!」


何度も出し入れを繰り返し、黄金の天秤より『くどい』という意思が伝わって来たことで止める。

その後に、『価値ある物を乗せろ』という意思が伝わって来たので白人男は財布より100ドル紙幣を取り出し乗せてみる。

次の瞬間、『ゴミを乗せるな』との意思が伝わって来る。

白人男は黄金の天秤に話し掛ける様に悪態をつく。


「100ドルだぞ!100ドル!!このガラクタめ、金の価値も解らんのか?」


黄金の天秤からは『国が亡べば無価値』との意思回答が伝わって来て白人男を呆れさせた。

白人男は世界最強の国が亡ぶ訳ないだろうと心で思いつつも、黄金の天秤に従うしかないことを思い出し、考える。

次に白人男は金庫より金の延棒を取り出し、黄金の天秤に乗せてみる。


「時代が変わろうと金ならば不変!それにお前も金、これならば文句無いだろ!!」


誰かがその様子を見れば気でも狂ったと思うかもしれないが、誰も見ていないのでそう思う者はいない。

白人男に黄金の天秤より『OK』の意思が伝わった為、白人男はドヤ顔で頷く。

1本50gである。

資産形成の基本単位である。

この時代、1g=7,000円程であった。

1ドル=240円程の時代だった為、延棒一本が1,460ドル程となる。


「少し動いたか?」


誤差の範囲と言える程の微々位程度には動いたが、まだまだ足りない様である。

考えに考えた末、白人男は金の延棒を次から次に投入し、金の天秤が逆側に傾くまで乗せ続ける。

逆に傾くと言い知れぬ不安が消え、全能感が身を包む。


「おお!何が何やら解らんが、トラメンデスもの凄い!!今なら何でも上手く行く気がする!!ウイニング勝ているぞ!!」


白人男の叫びは家に居る妻を少しだけ不安にさせた。

元モデルの彼の妻は白人男から「広告塔」としてインテリア関連の会社やホテルやカジノの運営を任されていたが、白人男が気が狂ったとなれば本業の方も取り上げて療養させるべきか悩んだ。

しかし、妻は様子を見ることとした為、白人男は野放しとされた。

白人男は土地買収やその他諸々で悪事を働くが何故か捕まらない。

そう、白人男は知っていた、天秤が悪に傾かなければ捌きは降りないという事を・・・

白人男は異業種進出などを行い、どんどんと力を付けて行った。

勿論、苦境が無かった訳ではない。

巨額債務に会社の倒産、現役モデルとの浮気の発覚と共に妻とは離婚訴訟となり、妻とは慰謝料を巡って裁判以外でも泥仕合を演じた。

一人目の妻との結婚はそんな形で幕を閉じ、何とか離婚が成立した。

その翌年には子供を妊娠したことが発覚して2人目の妻を迎えることとなる。

異業種進出で手に入れた会社を売却したり、撤退したりして損益を減らしたり、大都市に所有する物件も多数を中国系の企業に売却したり、複数の国の銀行に借金して苦境を乗り切った。


「くそ!この大食いめ!!」


そう、白人男は天秤に悪態をつく。

事ある毎に天秤を利用したことで資金繰りが悪化したのである。

しかし、天秤が悪いのではない、天秤に助けを求めないといけない程に悪事を行った白人男が悪いのである。

悪事を重ねても天秤が助けるから始末が悪い。

金を積めば助かる事に味を占めた白人男はそれを大いに利用した。

それに、彼の遊行費も馬鹿にならなかったから資金繰りが悪くなったのは言うまでもないだろう。

そんな白人男にも再起の時がやって来た。

著名な経済誌が選ぶトップ企業に再びランクインする程に持ち直し、本業は大都市に新たな高級アパートメントを多数建設することで潤い、各地に多数のホテルやカジノをオープンさせるなど、白人男の飛躍は著しかった。

そんな白人男は又調子に乗り、現役モデルとの浮気をまた行い、それが発覚し2人目の妻と離婚することとなる。

しかし、彼に人生最大の転機が訪れる。

白人男性は政治の世界に身を投じた。

R党の歴代大統領の参謀を務めた政治コンサルタントが白人男のブレーンになると共に、予備選挙に出馬する。

自らを「アバトレイダー調停者」などと嘯き、公民権法を拡大して当時まだそこまで認められていなかったレズビアンとゲイを保護し、彼らが堂々と軍に入れるようにすることを公約に掲げたり、医療保険制度を白人男が包括的だと思うようなものに変える事や、超富裕層への優遇課税を実施するなどを謳い文句に打って出た。

しかし、これは失敗に終わる。

その頃3人目の妻と婚姻をする。

それから10年程後、再度白人男は大統領選挙の党内候補に名乗りを挙ようとした。

しかし、これも諸事情により予備選挙への不出馬を表明し撤退する。

白人男は次の機会を虎視眈々と待つ。

そして、次の機会に出馬表明会見を開き、打って出た。

白人男は下馬評を覆し、見事大統領選挙の党内候補となり、その勢いのまま国のトップとなる。

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