第14話 正義の秤 弐
「社長!何処行ってたんですか?」
「ちょっとアナザーワールドまでな」
「はぁ?何寝ぼけた事を言っているんですか?」
「信じられんかもしれんが、ほれ、これがその証拠の戦利品だ!」
白人男は自慢げに異界堂で手に入れた黄金の天秤を自慢げに掲げて部下に見せびらかす。
「・・・」
「どうだ?凄いだろ!!年季も入っているが、間違いなくこのズシリとした重さ、輝き、純金製だぞ!!」
「あの・・・社長・・・」
「何だ?欲しいのか?やらんぞ!!」
「いえ・・・そうではなく・・・何もない手を掲げて何を言っておられるのですか?」
「ん?・・・これが見えんのか?」
「はい・・・私には見えません・・・」
白人男は不思議そうに自分の事を見詰める部下を前に驚きで心は埋め尽くされていた。
『アナザーワールドというのは本当だったのか?』
正直言って白人男は信じていなかった。
何だか気になる裏路地を見つけ覗いただけであった。
普通はそんな事をしない。
知らない裏路地を覗くだけでも危険なのだ。
特に白人男は身形も気にしており、着ているスーツはそれなりのハイブランドである。
そんな者が見知らぬ裏路地に入り込めば襲われても不注意にそんな裏路地に入り込んだ者が悪いというのが常識である。
しかし、その裏路地を見つけた時、白人男は入らずにはいられなかった。
導かれるというのかそう言う事なのかもしれないなどと今は考えている。
「見えないなら仕方ない。これは選ばれた俺にしか見間のかもしれない!」
「はいはい、そうですね・・・それより!先方がお待ちですよ!急いでください!!」
「お、おう・・・そう言えば、ディールの予定だったな」
大口の取引の控える中、白人男は少し気晴らしに出て隠界に迷い込み、異界堂に辿り着いたのであったが、そんなことは既に頭にない。
今は取引を成功させることしか頭に無いのであった。
「信じてほしい!!俺を!!」
「あなたがそこまで言うなら・・・」
「 素晴らしい!!貴方はもう勝っている!!」
彼はある大学で経済学の学士号を取得した後、父親の不動産事業を引き継いで事業を拡大している最中に居た。
今まさに大口契約を決め、ご満悦で顧客の元を後にしたのであるが、その手には黄金の秤を手にしていた。
ズシリと重かった秤が『重い、邪魔だ』と思えば、軽くなりスーツのポケットに収まる程度のサイズに変化した。
まるで白人男の思いを読み取った様に、意思を持つように変化した秤に驚いていた。
『不思議な秤だ・・・流石はアナザーワールドの品だ』
その日はその変化に驚いただけであった。
次の日から時間がある際は黄金の秤と対話を始める。
白人男は「お前は何者だ?」から始まり、「何が出来るか?」等々の質問を投げ掛けて行った。
勿論、答えは返ってこない。
逆に周りから独り言を言う事を度々目撃され、気でも狂ったのかと思われた程である。
一時期は有名雑誌の富裕層リストの最初のリストに載る程だった彼もある事で経済的損失を被った為、そう思われても仕方なかった。
起死回生のその後直ぐにこの白人男は打つ。
顧問弁護士に悪名高き者を迎い入れたりした。
その過程で天秤の使い道を知る。
ビジネスは綺麗事だけでは廻らないが、悪に手を染め過ぎても良くない。
しかし、このは白人男は儲けを優先し、悪に手を染めた。
ある日、天秤を何時もの様に持てば、片方に大きく傾く。
「何だ?・・・」
変化した天秤をジッと見詰めていると、何とはなくどうして片方に傾いたかが理解出来た。
「悪に傾いている?・・・」
この時白人男はこの天秤は善悪を量るものだと理解した。
理解したがまだ如何すればその傾きを変えられるかを理解していなかった。
ただ一つ、このままでは己に良くないことが起こる事だけは天秤から意思のように何とはなく伝わって来たのであった。
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