『千夜一夜物語』を基調とし、物語の中に別の物語が重なる複雑な入れ子構造が最大の特徴だ。登場する饒舌な床屋は、自身らが五重の「話の中の話」の住人であるとメタ的な主張を繰り広げる。語り手がシェヘラザードや宰相、酒場の吟遊詩人へと次々に遷移する構成が秀逸だ。虚構と現実の境界を巧みに曖昧にする、知的な遊び心に満ちた幻想的な短編作品である。古典文学の雰囲気を楽しみたい人。複雑な構成の物語に挑戦したい人。物語の持つ魔力に魅せられたい読者におすすめできる。
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